LTSコラム

ビジネスシーンで使える行動心理学 第1回:身近な行動の観察

こんにちは、LTSコンサルタントの大山あゆみです。わたしは「行動心理士」の資格を持っています。あまり馴染みのない資格かもしれませんが、行動心理士は、行動心理学の考え方に基づいて、人間の思考・認知傾向、しぐさの真意を読み取り、良い人間関係に生かせるようアドバイスできる人材を育成し、それを実践する知識および技能の程度を審査し、職業能力の向上と社会的経済的地位の向上に資することを目的とした資格です。簡単に言うと、人間のしぐさについて学び、それを活かし、より良いコミュニケーションを促進させることができる人材を育てる資格です。

はじめに

LTSは、お客様の戦略や仕組み・制度の企画・設計の支援にとどまらず、現場に入り込み、現場の方々を巻き込みながら、仕組み・制度の定着までを支援します。このような活動では、多くの関係者の方の協力が欠かせません。関係者の方と協力関係を築くためには、企画・設計する仕組み・制度が説得力のあるものであることはもちろん、それ以上に、相手から信頼されるコミュニケーションを取ることが大切になります。

コミュニケーションとは必ずしも、言葉や文字といった言語的な表現のみで行われているわけではありません。非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)と呼ばれる、顔の表情や身振り・手振り・姿勢といったしぐさは、対話において時に言語よりも多くの示唆を相手に送ります。一説によると、情報伝達において、このような非言語コミュニケーションが占める割合は9割にも上るそうです。相手は、言葉では「賛成」と言いつつも、表情が何か心配や懸念がありそうな様子を醸し出していることもあります。そのため、わたしたちコンサルタントは、関係者の方に意見を伺う時も、お願い事をする時も、相手の言葉を鵜呑みにせず、相手の反応全体から意図を感じ取るようにしています。このような時に、行動心理学の基礎知識を持っていると、真の意図を理解するうえでとても役に立ちます。

このコラムでは、わたしたちコンサルタントがプロジェクトの現場で関係者の方と協力関係を築く上で、気を付けていることを、行動心理学を通して紹介したいと思います。皆さんの日々のビジネスシーンでも是非活用してみてください。第1回の今回は、行動心理学の基本として、身近な行動心理学について解説します。

身近な行動心理

「手の位置」

皆さんは、ビジネスにおける打合せ等の場で、相手のどこを見て、相手の感情や本音を探ろうとしますか。
相手の表情や、視線の位置、声のトーンなど、注意して観察すべき個所は複数ありますが、まずは「手」を例にとってみます。

会議や面接の場で、机を挟んで相手と座る機会があると思います。その時、相手の手の位置をよく観察してみましょう。相手の手は、机の上にありますか、机の下にありますか、首やおでこを触っていますか。手の位置や動きで、以下のような場合が考えられます。

【相手の手は机の上に置いてある】…話の内容に積極性を感じている。このしぐさはこれを見ている相手に安心感を与えることがある。
【相手の手は机の下に置いてある】…話の内容に消極性を感じている。自信がない。このしぐさは時に、これを見ている相手に不快感を与えることがある。

自分の手を相手に見せるということは、相手に安心感を与えます。手を全く動かさずに話をする人よりも、何らかのジェスチャーや動きがある方が活き活きとした印象を受けますし、手を見せることは手の平から肩にかけての大きな動作になるため、話し合いに積極性のある印象を受けます。物事を相手に活き活きと伝えたい時は、ぜひ手を机の上に出し、時には動かし、会話を進めてみてください。

【首やおでこを触っている】…話の内容に不安や心配を感じている。性別や癖によって触る場所・物が異なるが、基本的には自分の肌に触れる場合が多い。

これはよくみられると思います。例えば、話をしている相手が、首をひねりながら首筋に手を置いていたり、額や頬に手を置いていたりすることはありませんか。また男性であればネクタイ、女性であればネックレスやピアスに触っていたりする場合はありませんか。そんな時、相手は不安・緊張を感じています。自分の肌に触れる行為は、「自分自身を落ち着かせる、緊張を解きほぐす」という働きがあるため、相手にこのしぐさが見られたら、自分の発言やこれまでの会話を考えるようにしたり、少し休憩を取ったりすることが必要かもしれません。また、相手の不安要因を探るのも良いかもしれません。

「腕組み」

また、手に関連して、よく見られる「腕組みのしぐさ」は、皆さんどのように解釈をしていますか。

男女差はありますが、男性の腕組みは、相手に対して権威や自信を印象づける場合が多く、女性の腕組みは、不快な感情から自分を守る意図が含まれる場合が多くあります。打合せの場で相手が腕組みをしていると、何となく威圧感を感じる、拒否されているのではないかと不安になることはありませんか。逆も然りで、自分が腕組みをしていると相手に対して同様の印象を与えることになります。考え込む際についつい腕を組んでしまうこともあるかもしれませんが、異なる意図に受け取られてしまうリスクもあるので、腕を組まないのが最善の策だと思います。

ただし、腕組みは「寒いから腕を組んでいる」「楽だから組んでいる」「癖で組んでいる」場合も多いため、解釈に気を付ける必要があります。

「目」

次は相手の「目」にフォーカスを置きたいと思います。

目は多くの情報を受ける器官であり、目から得られた情報はそのまま脳に伝えられます。そしてそのまま感情・行動・思考に変化します。情報収集の基礎であるからこそ、目は多くを語ります。そのため、目を閉じるというしぐさは、自分の中に入ってくる情報をシャットアウトし、脳を一時停止させる目的がある場合がとても多いです。皆さんも無意識のうちに目を閉じて首を振ったり、目を閉じて頷いたりしていることはありませんか。

相手が目を閉じて話を聞いたりうなずいたりする様子は、一見、聞いていることを整理したり、再考したりしているように見えますが、そこには不快感情が多くあることが研究データにより明らかになっています。わたしは相手にこのしぐさが現れた時、トピックを変えたりアプローチを変えたりするよう心がけています。特に、前述した「腕組み」をしながら目を閉じている様子は「納得がいかない」「理解できない」と思っていることが多いため、聞き役に回ったり、言葉を変えたりすると良いと思います。

また、相手が指や手で瞼をおさえる場面を見たことはありませんか。これは男性に多いと言われていますが、とても強い不快感情を持っている場合に多くみられます。眠いのだろうか、目が疲れたのだろうか、と思いがちですが注意が必要です。これが不快感情の表れだと気付かないまま、相手の負担や不満に気がつかず話を進めてしまうと、好ましくない結果が待っていることがあります。わたしは、打合せの場で相手にこのしぐさが現れた時は、伝える言葉を変えたり、質問をしたりするなど、アプローチを変えた上で、何が原因だったのか、どうしたらよかったのかを考えるようにしています。

目は口ほどにものを言うと言いますが、本当にそうだなと感じることが多くあります。目を開けたり閉じたりするしぐさだけでなく、上記のように瞼を触ったり、目じりや目の周り(眉毛)を触るしぐさも、その人の心を表すものであるため、見逃さないように心がけています。

まとめ

普段「言葉」を使って相手とのコミュニケーションを図るわたしたちですが、その言葉と意図や心は必ずしも一致しているとは限りません。

皆さんも、お客様へのヒアリングの場や、セールスシーンで、「この方はこのように言っているが、本当はそうでもなさそうだな…」と直感的に感じたり、打合せのアウトプットに対する認識が実は異なっていたり…と、どこでボタンを掛け違えてしまったのだろうと悩むことがあるかと思います。
そんな時に、勘や経験を基にした推察に加え、その振る舞いや行動の意味を研究データに基づいた傾向として理解をしておくと非常に役立つ知恵になります。

相手を観察して得られた情報は「絶対」ではなく、文化的背景や国によって差異があります。しかし、その事象に対する「可能性」を考慮した対応ができるかどうかは、その後の結果や、相手との関係構築に大きな影響を与えます。是非、まずは身近な人の行動やしぐさを観察してみてください。

次回は、実際にわたしがプロジェクトの中で経験をした、「お客様の不安」を感じ取る瞬間について解説予定です。

ビジネスシーンで使える行動心理学シリーズ

第1回:身近な行動の観察
第2回:相手の不安を感じ取る瞬間
第3回:人間関係の中で「魅力的な人」とは

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