LTSコラム

失敗しないRPA導入『試験導入始め方から本格導入、高度な業務自動化に向けて(前編)』

こんにちは。LTSコンサルタントの吉野貴博です。LTSは、普段からお客様の業務改革活動に関わらせていただく中で、世の中のテクノロジーのトレンドをウォッチしています。昨今話題に上がっているRobotic Process Automation(以下、RPA)についても昨年から研究を進めてきた結果、現在では複数のお客様とRPA適用の案件が進行中です。今回のコラムではこれらを通して得た効果的なRPA適用の考え方を紹介したいと思います。

今回は前編として、RPAの概要やRPAの種類についてお送りいたします。次回は後編として、実際にRPA導入を進めるための手順や、またRPAとAIのような先端技術を組み合わせた一歩進んだ業務自動化に関する考え方についてお伝えしたいと思います。

RPA(Robotic Process Automation)って何だろう?

RPA(Robotic Process Automation)とは、人がPC上で行っている操作を自動化するソリューションです。情報システムやMicrosoft Officeツール等でのPC操作をHTMLのタグ、座標、テキスト等からソフトウェアに認識させ、同じ操作をソフトウェアに繰り返し実行させることができます。RPAを使うと、経理担当者が経費申請された交通費データを乗換案内サイトの情報と比較して精査する、複数のシステムから必要なデータを抽出・加工して1つの帳票を作るといった、これまで人が行っていた複雑で一連性を伴う手順を自動化できるのです。これまでもマクロ/VBAといった簡易自動化ツールは存在しましたが、RPAではPC上で行われる大抵の操作を実装でき、より汎用性が高いツールと言えます。RPAは2016年頃から情報通信業、金融・保険業を中心に導入が始まり、早くも2017年に入ってからは業界を問わず大きな注目を集めています。

RPAで自動化できる範囲は図表1に示す通り、ユーザー・インターフェイス上のものに限ります。アプリケーションの連携やデータベースの統合を前提とした従来のシステム化による自動化とは異なります。

 

図表1 人からRPAによる自動化へ

 

RPAはエクセルのマクロ/VBAによる自動化にも似ていますが、まず前述のように「連携できるアプリケーションが広い(※)」点で異なります。そして、「ノンプラミングで自動化できる」「(ツールによるが)稼動しているロボット(プログラム)を組織的に管理できる」といった点でもマクロ/VBAとは大きく異なります(図表2)。マクロ/VBAではプログラミング言語(VBA)にて実行したい操作をコードに変換して記述します。一方、RPAツールはGUI形式(グラフィカルユーザインタフェース)をとっています。ツール内にあらかじめ「繰り返し実行する」「転記する」といった動作一覧が用意されており、その中から実行したい順番で動作を選択していきます。RPAツール上で設計するプログラムはさながら業務フローのようで、ITリテラシが高くない業務サイドのユーザーでも直感的に設計しやすくなっています。また、個人管理ではなく組織的な管理ができることも、旧来のマクロ/VBAにはないRPAの強みです。

※エクセルのマクロ/VBAもパワーポイントやインターネットエクスプローラーといった一部のソフトウェアとの連携は可能ですが、RPAは多少の相性の問題はあれど大半のソフトウェアとの連携が可能です。

図表2 RPAとマクロ/VBAの違い

これまでは、システム化が難しい定型処理はアウトソーシング(BPO)を活用することが一般的でした。RPAはこのような処理を、BPOを活用することなく自動化することができます。しかも、RPAは会計など広く標準化された領域から適用が進んでいるため、BPOベンダーにとってRPAは脅威であると同時に、標準化された業務を受託する従来の知見を活かすことができる新たなビジネスチャンスでもあり、無視できない状況です。例えば、トランスコスモスは電通デジタルと業務提携し、RPAを活用した新規サービス開発に取り組み始めています。(※)

※「電通デジタル、トランスコスモスと業務提携 新会社「電通デジタルドライブ」を本日設立」トランスコスモス(2017/9/13)
http://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/pdf/2017/170913.pdf

RPAが注目を集めている理由とは?適している業務は?

実は、RPAは技術的に見れば従来からあるテスト自動化ツールやエクセルマクロと変わりません。それにも関わらず最近になって注目を集めている理由は、業務変革の中心が、大量処理のシステム化からシステム化まで及ばず人がやらざるをえなかった少量多種の処理に移ったということが考えられます。日本では1995年~2000年頃からERPシステム導入ブームが起こり、大規模システム投資によって主要なビジネスプロセスの自動化が進められてきました。一方で、多額の費用がかかるシステム化では全てのプロセスの自動化は不可能で、一件一件が小粒な業務や、セキュリティ等の理由でシステム間連携が困難な業務は、今に至るまで人による処理として残されています。費用対効果を説明しにくいこのような業務は、自動化するための追加投資を得るのが難しく、しかし積み重なると膨大な業務量となり、生産性向上を阻害します。そんな中で、比較的早く、安く、自動化できるRPAツールが世の中に普及し始め、一気に関心を集めていったと考えられます。そして近年の「人手不足」、「働き方改革」、「生産性向上」に関する議論の高まりも受けてRPAは一気にブームになりました。

RPAはシステム導入に比べ、早期に自動化の効果を実現できるソリューションです。どの業務にRPA適用が向いているかは、その効果を評価したうえで判断するのが一般的です。RPA適用による効果が見込める業務の特徴は以下の通りです。

・人為的なミスが許されず、確認作業が必要
・繁閑が激しい
・定期実行される(年1回の業務などは、RPA化しても効果が薄い)
・処理パターンが少ない
・業務ルールの変更が少ない(高頻度で発生する業務はマニュアル実行、変更がまれな業務はシステム

具体的に、ビジネスパートナーのWEBサイト(システムA)でお客様から予約を受け付け、その情報を自社の予約管理システム(システムB)に入力する業務を例に考えてみましょう。

お客様が予約された情報を誤ってシステムBに入力した場合、適切にサービスを提供できず大きなクレームとなることがあります。そのため、この業務をマニュアル実行する場合は、入力者が入力後にセルフチェックを行い、その後管理者がダブルチェックを行うという確認作業が必要となることがあります。RPAは事前に記述された入力処理をミスなく実行することができるので、そのような確認作業を廃止することができます。また、この業務がある期間のみ集中して発生している場合、最大業務量に合わせて人材を確保しておくか、その期間のみ都度人材を配置するなどの調整が必要となることがあります。RPAは、ソフトウェアのライセンス料やトランザクション量に応じた課金のみでその労働力を確保することができます。

一方、業務が年1回など低頻度で実行される場合は、RPAで記述された処理の管理などに手間をかけるよりはマニュアル実行してしまった方が効率的な場合もあります。また、システムAから出力した情報によってシステムBへの入力可否や方法が分岐する場合は注意が必要です。分岐ごとに処理内容を記述する必要があると、その設計や管理の手間が発生するからです。業務ルールの変更が高頻度で発生する場合も同様で、処理内容を都度変更する手間とマニュアル実行の手間を比べ、どちらが最適か判断する必要があります。その逆に、業務ルールが全く変更されない業務は、システム化によって安定的に実行することが望ましい場合もあります。

RPAツールの分類

RPAツールは、一つ一つの処理の流れをロボット(ロボ)と呼ばれる実行プログラムとして保持します。このロボットをどこに保持するのかという点で、大きく分けて二つに分類できます。ロボをサーバーに集約して管理し、サーバー上から自動化業務を実行する「サーバー型」と、PC端末(クライアント)内にロボを保持し、クライアントのデスクトップ上で自動化業務を実行する「デスクトップ型」です。(図表3)

サーバー型
ロボをサーバー内に保持し、サーバーからの命令でクライアントであるPC端末を操ります。このため、すべてのロボの稼働状況の監視や稼働スケジュールの管理をサーバーで集中的に行えます。自動化業務を組織的に管理することを前提としたツールです。ロボはロボを利用するユーザー部門が作成し、サーバーは情報システム部門などが開発や保守・運用をするなど、役割分担することもあります。その場合は、ロボが停止してしまった際などに混乱が生じないよう、ロボ側の運用とサーバー側の運用をしっかり切り分け、責任分界点を明確にしておく必要があります。

●デスクトップ型
ロボをクライアント内に保持し、PCのデスクトップ上でロボを実行します。安価で速やかに自動化できるため、迅速に効果を出すことに重きをおいたツールです。個々のクライアントでは、それぞれで作成したロボのみ管理可能なため、野良ロボ(誰が何のためにつくったか不明なロボ)が大量発生しないように運用でカバーする必要があります。またPCが故障すればロボットも実行不可能になるため、バックアップ等についても留意する必要があります。

 

図表3 サーバー型とデスクトップ型の比較

 

これらとは異なる分類軸として、自動化業務の開発方法によっても分類できます。デザイナー機能(操作を設計)によるものとレコード機能(操作を記録)によるものの大きく2種類あり、ツールによってどちらの機能を重視するかが異なります。ただ、多くのツールは両機能とも有しており、必要に応じて両者の機能を使い分けたり、組み合わせたりして使います。

●デザイナー機能
ツールが用意した命令セット(例:「(データを)コピーせよ」「ペーストせよ」など)を組み合わせて自動化フローを作成し、一つ一つの命令で処理したいデータを定義します。データ定義の際、プログラミング言語を記述するなどカスタマイズすることで、高度な処理をさせることも可能です。

●レコード機能
ユーザーがPC上でデータのコピーやペーストなどの操作を実際に実行し、それをツール側で一つ一つ記録して自動的に自動化フローを生成します。(エクセルマクロの作業記録機能と同じイメージ)

RPAを業務に適用するために考えるべきこと

RPAは、人に代わる新たな「働き手」です。RPAを導入する際は、現行業務をそのままRPAに置き換えるのではなく、RPAという働き手を含めて業務自体を考え直すことが必要になる場合があります。また、RPAを導入した後も、業務が整理・整頓され、適切な担い手によって運用されている状態を実現する活動に、組織全体で取り組むことが必要不可欠です。
業務整理をせずにロボを開発すると、チェック工程が膨らむなど逆に工数が増加したケースもあります。例えば、先ほどの例で見たシステムAからシステムBへの情報転記について、予約内容をレコードごとに2パターンに振り分けて入力する必要があり、現行は以下のフローでマニュアル実行しているとします。

 

 

このフローをそのままRPAで自動化すると、レコードごとに適切な処理がされているか、人が張り付いて確認しなくてはならず、(一件一件の処理は早くなるかもしれませんが)自動化による大きな効果は得られません。

この場合、以下のようにフロー自体を変更してからRPA化してみるといかがでしょうか。このフローのポイントは以下の2点です。
・人が行う判断業務とロボが行う処理業務を集約
・人が行う判断業務にはExcelやAccessを活用

 

まずシステムAの情報をRPAでエクセルやアクセスに抜出したうえで、一旦全てのデータに集中的に人がチェックをかけてデータを振り分け、システムBに一気にRPAでデータを投入します。このように、システムができる単純作業と人の関わる判断が一処理の工程上に混じっているフローを整理してからRPA化することで、人が単純作業から解放されます。これこそがRPAによる自動化の本質的な効果であると思います。

以上、今回は前編として、RPAに関する基礎知識についてお伝えいたしました。次回のコラムでは、実際にRPA導入を進めるためには何をすればよいか、またRPAとAIのような先端技術を組み合わせた高度な業務自動化に関する考え方についてお伝えしたいと思います。

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