LTSコラム

究極のサービスデスクを目指して(2)
2011.8.4

◆サービスデスクは、「リッツ・カールトン」のようなサービスを提供できないのか

究極のサービスの提供事例として必ず挙がるのは、高級ホテルチェーンの「リッツ・カールトン」のサービスです。
「宿泊客が忘れたパスポートを新幹線に乗って東京まで届けた」などの感動のエピソードは有名ですよね。個々のスタッフがユーザの立場に立って最善のサービスを提供する、そしてその判断が現場に委譲されているというのが大きな驚きでした。
※ 詳しく知りたい方は「リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間」(かんき出版)などをご覧ください。
では、サービスデスクは、「リッツ・カールトン」のホテルスタッフが宿泊客に提供しているようなホスピタリティに溢れた質の高いサービスを提供できないのでしょうか? 以下にサービスを比較してみました。

この表にあるとおり、サービスデスクは個々のスタッフの裁量がほとんどなく、サービスの方向性としても「均一化」を求められているので、ユーザの個々のニーズに合わせた臨機応変な対応というのはかなり制約があると言えそうです。
これは前述したサービスの要求者/評価者が、「ユーザ」(サービスを受ける一個人)だけではなく、「顧客」(ビジネスを遂行する責任者)と「ユーザ」の両方でかつ、必ずしも利害が一致しないという特異性に大きく関係しています。
しかし、このことが「サービスデスクがホスピタリティに溢れた質の高いサービスを提供できない」ということを意味する訳ではありません。結論として、「リッツ・カールトン」のように個人が裁量を持ち、サービスの枠を超えた臨機応変なサービスを提供できないとしても、サービスデスクがITサービスの提供である以上、ユーザの立場に立って、制限の中で最善のサービスを提供していくことが求められていることは不偏であり、サービスデスクとしてのやり方があると考えます。

◆サービスデスクが目指すべきサービス

では、前述のクレームのケースではどう対応すべきだったのか考えて見ましょう。デスクトップにはアイコンが多数あり、共有フォルダへのショートカット、アプリケーション起動アイコンなどが規則正しく整理されている状況でした。
「リッツ・カールトン」のコンシェルジュであれば、この状況から移行後もデスクトップのこの並びが再現されていることをユーザが望んでいるだろうと察し、過剰サービスではあるが、独自の裁量でアイコンを手動で置換前と同じ並びに整理して引き渡したかもしれません。しかしながらサービスデスクでは前述のように、勝手に過剰サービスを施すことは許されません。(「リッツ・カールトン」であっても、過剰な対応をすると他の宿泊客にもしなければならなくなるといって問題になることもあるようですが)答えは制限の中でも最善のサービスを考えることです。

このケースにおいては例えば以下の2つの対応を行えば、ユーザに気持ちよさを感じていただけたのではないかと思います。
 ・置換を始める前の早い時点でデスクトップのアイコンの並びを再現できないことを事前にTELなどでご説明する。
 ・ユーザ自身が再現できるよう置換前のデスクトップのスナップショットを印刷し、PC引渡し時にお渡しする。
サービスデスクが目指すべきサービスは、ユーザの満足度を最大化するという点では「リッツ・カールトン」と同じだと思います。
ホスピタリティの精神を持ち、真にユーザの立場に立ってサービスを提供することを心がければ、例え裁量に制限があったとしても、気持ちを伝えることはできます。気持ちが伝われば、ユーザには満足していただけるのです。
「顧客」(ビジネスを遂行する責任者)だけではなく、「ユーザ」(サービスを受ける一個人)の満足があって初めて質の高いサービスデスクと言えるではないでしょうか。
あなたの現場ではSLAにこだわるあまり、ユーザ満足度に鈍感なサービスを提供していませんか?
次回は、ユーザ満足度の向上についてお話したいと思います。