改革活動の実効性と効果を高める方法 BPMフォーラム2018のサムネイル
プロセス変革・業務改革

改革活動の実効性と効果を高める方法 BPMフォーラム2018

このセミナーレポートは、株式会社エル・ティー・エスのLTSコラムとして2018年11月に掲載されたものを移設したものです。

2018年11月7日に開催された「第13回 BPM日本フォーラム2018」にLTSシニアマネージャー島野陽介が登壇し、「改革活動の実効性と効果を高める方法」をテーマに、自律・継続する改革活動の進め方を講演しました。
島野 陽介(LTS 執行役員 Business Structure & Management Dept. 部長)

SIerを経て、LTSに入社。事業開発やDXなどのビジネス・コンサルティング案件に従事。近年は業界を問わず、事業・組織・マネジメント・業務・ITなどの幅広いテーマで、クライアントにおける企業変革の企画・設計および実行に多く関与している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

業務改善に有効なツールやテクノロジーが注目され、多くの企業で改革活動が進められるようになりました。しかし、プロジェクトを立ち上げてみたものの効果が得られない、または効果が限定的になってしまうというケースが多く見受けられます。それらの原因の多くは、会社のミッション・経営側で決定したミッションの「目指す方向性の明確化」をせずにプロジェクトを開始してしまうなど、プロジェクトの立ち上げ時の取り組みに起因しています。
効果的な改革活動を進めるためには「マネジメントや組織の壁」を超えた施策、「個人や部署の限定的な改善」を超えた目的ベースのアプローチが不可欠です。本講演では、最新の事例を踏まえて自律・継続する改革活動を4つのステップで解説します。

「第13回 BPM日本フォーラム2018」は『“働き方改革”を支える「生産性向上」を追求~BPM/BPMSが「RPA」「AI」の真価を発揮させる』をテーマに2018年11月7日に開催(主催:日本BPM協会)されたセミナーです。開催概要はこちらからご覧いただけます。

1.目指す方向性を描く

改革活動の一歩目は目指す方向性を描くことから始まります。現状を正しく認識し目指す姿を明確化することで、両者のギャップを問題として認識できます。
事業の全体俯瞰図を作成し、組織と機能の関係性、大まかな視点で事業全体で起きている問題と課題を把握し、企業活動の中でどのように取り組んでいくかを検討します。目指す方向性は、業務単位・機能単位など具体的な業務イメージが想起できるレベルで設定することがポイントです。

俯瞰図(プロセスマップ)
目指す方向性のイメージ

2.本質的なボトルネックを特定する

次に、組織のミッションや目標をおさえた上で、組織を取り巻く登場人物とその組織・機能のアウトプットを把握します。問題ツリーなどを活用し事象を構造化することで、目的を達成するための本質的なボトルネックとその影響を把握します。特定したボトルネックを改善することで生じる「経営へのインパクト」や、ボトルネックを改善するために変えなければならない社内制度や方針などの「制約」など、定量・定性でのインパクトを把握し影響箇所を説明できる状態になることで、実効性を担保し何をすべきか意思決定ができるようになります。問題ツリーは、本質的なボトルネックとその影響が容易に把握できるため、経営側への説明時に活用することもおすすめです。

※問題ツリー
TOC思考プロセスをツリー状にしたもの。TOC思考プロセスとは『ザ・ゴール2―思考プロセス』(エリヤフ・ゴールドラット著、三本木亮訳、ダイアモンド社。2002年)で紹介されたボトルネックの特定、ソリューションの立案、アクションプランの策定を目的とする組織的な問題解決方法。
『事業性評価実践講座―銀行員のためのMQ会計×TOC』(相馬裕晃著、中央経済社。2017年)を参考に図を作成。

3.変革のステップを決める

目指す方向性とやるべきことが明確化されれば、施策のステップを決めることができます。企業活動は、効果が高く難易度の高い①ミッション・目標→②アウトプット→③プロセス・組織・人の順番に進められるため、施策も原則として①から取り組んでいきます。最終的なゴールや途中のトランジションを見据えて、取り組みのテーマごとに“変化に強い組織”に向けた中長期での取り組みを設定していきます。

取り組みのステップ例

ここでの注意点は、改革活動の取り組みテーマが大きくなりすぎてしまうと社内からの理解を得られずプロジェクトが頓挫してしまうことがあるため、会社の文化や状況などを踏まえて現実的な進め方に落とし込んでいくことです。また、短期的な改革活動の成功体験を社内で共有し現場のモチベーションを上げていくことも大切です。

4.実行体制を決める

改革活動で設定したミッションは、組織の目標よりも大きな単位となるため、自ずと組織を超えた活動になります。組織や業務・機能を超えた取り組みでは、目的に合わせて最適な体制を構築することが大切です。しかし、どのような組織でも組織間の壁が存在します。そこで、正しい意思決定ができる状態にするために、経営側をしっかりと巻き込むことがポイントとなってきます。組織間を跨ぐ取り組みは、テーマに応じた最適な人員アサイン、権限の付与、評価制度との連動も不可欠なため、権限・権威や人事制度などの後押しが必要となります。

実行体制のチェック観点

まとめ<プロジェクト開始前の4つのステップ>

効果的な改革活動を進めるためにプロジェクト開始前に取り組む4つのステップについてご紹介しました。この各ステップは、それぞれステップで求められている状態を全てクリアすることができて、初めて次のステップに進むことができるようになります。今回の取り組みの最終的な目的である『プロジェクト開始』に向け、着実にステップを踏んで改革活動を進めていきましょう。


ライター

CLOVER編集部()

CLOVERは、株式会社エル・ティー・エス、株式会社エル・ティー・エス リンクの社員によって運営されています。自律・継続的な成長を目指す人や企業に役立つ、変革・DX事例など学べるコンテンツを発信中。