LTSコラム

ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話 第15回:業務とは何か(その5-業務計測の手法)

こんにちは、LTS執行役員の山本政樹です。ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話第15回です。前回は「KGIとKPI」についてお話しましたが、前回のコラムの最後に「業務に投入した時間の計測は難しい」という話をさせて頂きました。今回はこの業務時間の計測の手法について語りたいと思います。

業務時間計測の進め方

 

業務時間計測を始めるには、まず計測対象となる業務の区分を決める必要があります。この区分ごとに計測用のコード(計測コード)を割り当て、計測ツール上でコードに対して業務実施時間を報告(賦課)することで時間を集計します。

この際、既に計測対象組織の業務の棚卸しがされているのであれば、すぐにコードの割り当てとツールの設定に入ることが出来ますが、業務の棚卸がされていない、もしくは現状の業務区分が計測したい単位と異なる場合には業務の棚卸(再棚卸)からはじめる必要があります。業務棚卸については過去のコラム(※)で説明したプロセスマップを使うことができます。下図はプロセスマップを用いて計測コードの体系を整理した例です。

※ プロセスマップについては、「ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話 第九回:自社のプロセスを俯瞰するプロセスマップの使い道」で詳しく説明しています。

業務時間計測の3つの方法

業務時間計測の方法は目的、対象業務の性質、組織文化などによって適した測定方法は異なりますが、大きく2種類に分けることができます。

1つ目が、リアルタイム計測(実測法)と呼ばれるものでPC監視ツールやストップウォッチ型ツールによって業務が行われている時間を直接計測するものです。リアルタイム計測には自動で計測する「自動リアルタイム計測」と手動で計測する「手動リアルタイム計測」という2つの方法があります。リアルタイム計測は細かい業務の粒度で計測をしたいケース、例えば業務標準化や業務改善、個人のワークマネジメントを行いたいケースに向いています

2つ目が、バッチ計測(実績記入法)と呼ばれるもので、作業者が一定期間の業務従事時間を自己申告により報告した数値を計測時間として利用するものです。計測したい業務の粒度が比較的大きくてもかまわないケース、例えば組織全体のコスト管理や労務管理を行いたいケースに向いています

これから「自動リアルタイム計測」「手動リアルタイム計測」「バッチ計測」の3つの手法について詳しく説明していきます。

業務をしながら自然と工数を計測できる自動リアルタイム計測

 

自動リアルタイム計測はPC内に監視ツールをインストールし、PC上で特定のソフトウェアやウェブサイトを利用していた時間を計測します。そしてあらかじめ業務毎の計測コードと、その業務で使われるソフトウェアの画面名やファイル名を紐づけておくことで時間を集計するのです。計測はPCが行うため入力負荷は低く、きわめて高い精度で計測することが可能です。しかし、監視されているという意識が生まれやすいために従業員の心理的負荷は高くなります。またPC外での作業や離席の多い場合は、正しく計測することは出来ません。

この手法を使う場合に、最も考慮しなければいけないのがソフトウェアと計測コードの紐づけです。業務と業務で使われているソフトウェアやファイルの紐づけを行わないと業務時間の集計を行うことはできません。実際に導入する際にはこの紐づけ作業だけでも一苦労ですし、業務上で新規にファイルを立ち上げて作業をした場合はうまく計測できません。また、同じソフトウェアを利用し異なる業務をしている場合は判別が困難になってしまいます(※)。そのため、自動リアルタイム計測は一から作業手順の可視化が必要な場合や、従業員の作業手順が標準化されていない場合での計測には不向きです。

※ ポータルサイトの株価情報を見ている時間が、個人的な目的なのか、お客様情報収集のために使われているのかといった判別はできません

ではどのようなケースに向くのかというと、BPOセンターやシェアードサービスのような既に一定の業務標準化がされており、さらに作業がPC主体であるケースです。このような現場で、個人やチームの作業時間を低負荷で計測し、さらなる生産性向上を行う上では最適のツールだと言えます。

柔軟性が高く計測精度も高い手動リアルタイム計測

 

 

手動リアルタイム計測はストップウォッチ型のツールを利用し計測をする仕組みです。従業員はこれから自分が行う業務を計測コードの中から選択し、ストップウォッチのカウントを開始させます。そして、次の業務を開始する際にまた新たな計測コードを選択するわけですが、この時にカウントがリセットされ、前の業務の開始時間から次の業務の開始時間までが業務の所要時間として記録されます(※)。したがって計測精度が高く、数分から数十秒単位の細かい作業にも対応することができます。さらに、手動で入力するため業務上発生しうる状況(PC上の作業、移動、会議等)にある程度柔軟に対応することができます

 

※ ツールには通常「業務終了ボタン」はなく、次の業務の開始までの時間が前業務の実施時間として記録します。これは業務の切替時間が記録されず、一日の業務時間と、記録した時間の合計が合わなくなることを防ぐためです。

しかし、自動リアルタイム計測と同じく監視されているという意識が生まれやすいので、心理的な障壁が高くなります。また、毎回の作業のたびに入力しなければならないため、入力負荷が高く一定の定着期間が必要になります。

手動リアルタイム計測は他の手法と比較した場合導入の障壁が高いですが、定着すれば正確に細かく計測が可能なため、業務改善を進める上で大変効果的なインプットを得ることができます。

従業員の負荷が低く入力の強制力を担保しやすいバッチ計測

 

バッチ計測は、従業員が自己申告した業務時間を計測時間として利用する方法です。したがってPC上の作業、移動、会議等、業務上発生するどのような状況にも対応することが可能です。

バッチ計測にも大きく分けて二種類の手法があります。一つは、勤怠管理ツール等を利用して、1日の勤務時間の内訳を計測コードごとに報告する手法です。勤怠管理と組み合わせることで、勤務時間と内訳業務の合計時間の整合が合わなくなることを防ぐことが出来ますし(※)、申請の強制力が高くなります。

※ 勤務時間と実施業務の内訳の合計が合わない場合は申請ボタンが機能しないようにすることが可能です。

もう一つはカレンダー(予定表)ツールを利用して、カレンダー上に実績の作業と時間を入力していく手法です。こちらはカレンダー上で実績をメンテナンスできるので、操作性が高いというメリットがあります。また、カレンダー上に予め登録していた予定を実績に置き換えていくというように、予定と実績を一元的に管理できます。

どちらの手法も自己申告制になる上、リアルタイム計測に比べると計測負荷が軽くなるため従業員の心理的障壁が低くなり導入しやすいのがメリットです。しかし特性上、伝票処理一件あたり時間のような細かい作業ごとの時間の計測には向きません(※)。計測の単位はおおむね15分~30分単位となり、必然的に誤差が大きくなります。

※ 一件あたりの作業時間をとりたい場合、その作業にかけた全体時間を件数で割ることで一件あたりの平均作業時間として算出することは可能です。

バッチ計測は計測粒度が多少粗くなりますが、コスト管理や労務管理には必要十分ですし、組織や個人の時間の使い方を見直し、上司と部下のコミュニケーションをはかる目的にも十分に活用できます。さらに従業員の心理的負荷も比較的低く、勤怠管理ツールを利用するケースでは定着にあたって課題となる入力の強制力を高めることができるため、これまで業務時間計測を行ったことがない組織が最初のステップとするには有効な手法です

(画面はLTSが勤怠管理に利用しているチームスピリットです)

 

業務時間計測後の注意点

 

業務時間計測をするにあたり、どのように社内に導入していくかも重要ですが、導入した業務時間計測の仕組みを定着させることがとても重要になります。どのような手法を使うにしても、計測結果が安定するには通常3か月から半年程度かかります。

計測当初は計測コードが不十分だったり、分かりにくくて賦課する計測コードを間違えてしまったりといったトラブルが頻発します。また中には真面目に計測を行わない従業員もいます。ですから推進する側が現場の状況確認を豆に行い、仕組みを改善する、従業員への入力を促すといった啓蒙活動や改善活動をしっかり行っていく必要があります。

まとめ

 

ここまで紹介したものをまとめたのが以下の表になります。

それぞれの手法にメリットデメリットがあるため、導入する目的や自社の業務の性質、組織文化などによって適した計測方法を選ぶ必要があります。これらの他に昔ながらのエクセルのシートを配って業務時間を申告してもらうという方法もありますが、シートの配布と集計の手間、さらには誤操作や集計ミスに起因する誤計測のリスクを考えると、安価であるという以外にほぼメリットがないため、紹介していません。クラウドの勤怠管理サービスの価格は月あたり一ユーザー数百円ですから、こちらの方が総合的には安上がりだとさえ感じます。

業務時間計測をする最終的な目的は業務を改善し、生産性を高めることにあります。業務時間計測で可能になるのはあくまでも生産性の分母(投入資源)の側です。分子である業務の成果についてもしっかり計測した上で、改善活動につなげなければ業務時間計測を行っても効果はありません。業務時間計測は生産性向上のための第一歩だと理解頂ければ幸いです。

 

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