LTSコラム

ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話 第14回:業務とは何か(その4-業務の目標となるKGIとKPI)
2017.7.6

こんにちは、LTS執行役員の山本政樹です。ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話第14回です。今回は前回の「目的と目標」に引き続いて目標、特にプロセスの能力を測る定量指標であり、プロセス改善の目標値設定にも使われるKPIについて語ります。

プロセスの目標を示すKGIとKPI

 

KPIという概念をしっかり理解するためには、まずKGIという言葉を理解する必要があります。前回のコラムの冒頭に触れたように、ビジネスプロセスにはそれぞれ目的と目標があります。例えば製品開発プロセスの目的の例としては「魅力的な製品を提供し続けることで高い市場シェアを獲得する」です。この目的に対する長期での目標は「市場シェアを3年後までに40%にする」というような形で表現します。ここでの「3年後に40%」は具体的な目標数値であり、これが重要目標達成指標、KGI(Key Goal Indicator)です。

 

KGIという言葉はあまり聞いたことがないかもしれません。KGIは企業が最終的に達成すべき目標を示す指標です。どのような企業でも中期経営計画などで「売上高を何年度までにいくら」といった目標が置かれていると思いますが、これらがKGIと言ってよいでしょう。

 

KGIはあくまで長期的に到達すべき最終目標ですから、日常の活動の指針となる指標としては漠然としていて、具体的に何をすれば良いのかわかりません。そこで、例えば「市場シェアを3年後までに40%」がKGIであれば、「年間への市場への新製品の投入数」、「各製品の市場での認知度」といった中間指標をおいてKGIの達成進捗を管理します。これが重要業績評価指標、いわゆるKPI(Key Performance Indicator)です

 

KGIは最終的な目標ですから簡単に目標値を変えることはしません。一方でKPIは当面の目標を設定しつつ、実績値を見ながら目標達成のための施策に知恵を絞ります。そして目標が達成されれば、目標値を一段高いものにしたり、新たな指標を再設定したりして、また施策を考えていきます。このようなPDCAサイクルをまわすことで、ビジネスプロセスの能力をどんどん高めていき、最終的にKGIの達成まで導くのです。ですから、日常のビジネスプロセスマネジメントで向き合うのはもっぱらKPIとなります。

ただKGIとKPIの境目は曖昧なところもあり、一般的には長期的な目標も「KPI」と呼ばれることが多いのも事実です。どちらも組織全体やプロセス(業務)の能力を定量的に示し、目標設定の観点となるという意味では同じです。実務的にはあえて言葉を分けずにKPIという用語でまとめてしまってもさほど問題はありません。

 

KPIの種類は多種多様だが、QCDが基本

 

一言にKPIと言ってもその種類は様々です。下記の一般的なKPIのカテゴリと例を図示してみます。

KPIの種類は多種多様で、書店に行けば業界や業務、企業の規模に応じたKPIの考え方に関する書籍や論文がずらりと並んでいます。種類が多すぎて設定時には迷うことがありますが、まずは業務で“QCD”に関するKPIから設定することが基本になります。

 

QCDとはQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字のことです。その業務に関して高い品質の成果物を低コストで納期までに作成することが基本となる、ということを示しています。もともとは生産現場で生み出された考え方ですが、今では広く業務において重視すべき要素を示す言葉として多用されます(上記の表では「品質」「量・効率」「スピード」のカテゴリがほぼそれらに該当します)。KPI設定に困ったらまずは自分が担当している業務のQCDが何かを考えることはじめると良いでしょう。

 

業務の生産性向上に向けて

 

近年“働き方改革”が叫ばれる中、「生産性向上」という言葉が大変に注目されています。生産性は「成果/投入資源」という式で算出できます。ですから生産性向上とは業績や顧客満足といった成果を、より少ないコストや時間といった資源で生み出すこと、と言えます。これも企業にとっては大切なKPIです。

 

企業活動で成果にあたるのは売上や利益といった企業業績、さらには顧客満足や市場投入した製品やサービス数、顧客や市場からの認知度などです。一方で資源にあたるのは(その成果に関与した)従業員の数や工数、設備、資金(コスト)、材料、エネルギーなどです。「生産性」は全体としては効率を表す言葉であることには間違いないのですが、「成果」と「資源」にどの要素をあてるかで顧客満足に関する指標になったり、業績に関する指標になったりと、かなり意味合いが変わります。

 

企業全体で見れば最も大切な生産性は「業績/全ての投入資源(コスト)」でしょう。ただ、各部門や個人が業務改善を進める際に基本となる生産性は「時間あたりの処理量(処理量/投入時間)」です。いかに短時間で目の前の仕事を終わらせるか、ということですね。

 

もちろん時間あたり処理量をふやすことは業務の最終目標ではありません。業務の本当のゴールは業績や顧客満足の向上に寄与することですから、処理を効率化する前にそもそも業務がそれらのゴールとなる指標(=KGI)にしっかり寄与しているか考え直してみるべきです。中には既に役割を終えて形骸化しているような業務もあり、そのような業務は処理を効率化する前に、業務を廃止するなど抜本的に見直すべきです。

 

とはいえ各部署で行っている業務が無駄な業務だらけということは多くはなく、業務に占める割合としては「やるべきだができるだけ効率的に行いたい業務」が最も多いカテゴリかと思います。これらの業務を部署横断の全体最適で見直すことも重要ですが、時間もコストもかかりハードルが高いのも事実です。ですから現場ですぐにはじめられる生産性向上の施策としては「現在行っている業務の時間あたり処理量の最大化」が中心となるのです(※)。

※ 実はこの「時間あたり処理量」の最大化はビジネスプロセスマネジメントの起源でもあります。1900年の初頭、アメリカの技術者フレデリック・テイラーは鉄鉱会社で多くの労働者がシャベルで鉱石や灰をすくう作業をしているのを見て、労働者の体格別に、どの大きさのシャベルをどのように扱えば最も高効率に作業できるのかを算出しました。この実験の結果は驚くべきもので一人当たりの作業量は3.7倍に増え、生産量あたりのコストは56%も削減されました。そして、会社だけでなく労働者も賃金が63%上がるという恩恵を受けました。これに代表される数々の研究から、テイラーは科学的な経営管理の父とよばれています。

業務改善には処理量と業務時間を測らなくてはいけない・・・が。

 

業務改善は総処理量(ボリューム)が大きく、かつ改善要素が多いと思われる業務から取り掛かるのが基本です。IT等のツール導入、業務手順の統合や見直し(標準化)、人やチームのスキルや業務習熟度の改善などを通して業務を効率化します。

 

当然のことながら対象業務を選定する上でも、効果が出ているかを測る上でも「(各業務の)時間あたり処理量」をしっかり算出して推移を監視する必要があります。ところが、特にホワイトカラーの現場では、この「処理量」と「業務に投入した時間」を普段からしっかり計測できているケースが極めて少ないのです。

 

幸いにして処理量は業務のIT化が進んだ結果、普段意識していなくてもシステム内の過去のデータを抽出するなどして算出することが比較的容易になりました。一方の「業務に投入した時間」の計測は未だ多くの企業で難しいのが事実ですが、昨今の「働き方改革」の流れからこれを可視化しようとする動きが盛んになっています。次回のコラムではこの業務時間計測の手法と注意点について解説したいと思います。

 

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本書に登場した「KGIとKPI」は左記の書籍に詳しく解説されています。初めての方でも分かりやすく書かれており、とても読みやすい内容になっています。合わせて参照ください。BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の効果が出なかったり、システム開発がトラブル続きだったりと、ビジネスプロセスマネジメントが上手くいっていないと多くの課題を引き起こします。
2015年7月に刊行した『ビジネスプロセスの教科書―アイデアを「実行力」に転換する方法』では、このような問題を解決するために、ビジネスプロセスとは何か、どのようにマネジメントすれば良いのか等をわかりやすく解説しています。また、著者がこれまでにお客様企業の現場で経験してきたビジネスプロセス変革の事例も多く紹介しています。ユーザー企業側で組織変更、情報システム導入、アウトソーシング活用といったビジネスプロセス変革を行う予定のある方はもちろんシステム開発やアウトソーシングベンダーの担当者の方も必見です。