LTSコラム

ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話 第12回:業務を理解する上で重要となる「ガイド」と「イネーブラ」

こんにちは、LTS執行役員の山本政樹です。ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話第12回です。今回は前回のコラム「ホワイトカラーの生産性向上はまず成果物の定義から」の続きです。前回のコラムで業務には「ガイド」や「イネーブラ」という要素もあると軽くお話しました。今回は「ガイド」と「イネーブラ」について語ってみたいと思います。

業務の基本構成要素のおさらい

 

念のため、今回も「業務とは何か」ということについておさらいします。ここは前回のコラムと同じ内容ですから、前回のコラムを読んでいる方は飛ばしてください。

業務とは、インプットとなる物や情報を、何らかの処理を通じてより価値のある状態にして送り出す行為を指します。この送り出す物や情報をアウトプット(成果物)と呼びます。インプットとアウトプットにあたるのは人、物、金、そして情報です。組立作業は部品という物を製品という物に変えてアウトプットしていますし、会計処理は情報を処理して、さらに付加価値のある情報をアウトプットしています。そして各アウトプットは他の業務のインプットとして活用され、この連鎖は最終的なアウトプット(製品やサービス)がお客様に届くところまで続くというわけです。このような業務の基本となる三要素、「インプット(Input)」「処理(Process)」「アウトプット(Output)」を略して「IPO」と呼びます

 

 業務を遂行するために必要な要素

 

さて、下記は通販業界における紙媒体のカタログデザインプロセスです。アウトプットはカタログデザインで、これを印刷会社に引き渡すことがプロセスのゴールです。皆さんはこの業務のインプットは何だと推測するでしょうか。

すぐに思い浮かぶのは、カタログを作る上で必要となる「商品情報(商品名、仕様や価格)」や「素材(写真やイラスト等のカタログ素材)」です。これらは確かにカタログのインプットです。

フローを見てインプットとして扱うことを迷うのがカタログを作る上での指針となる「カタログ方針(上の絵だと「当期方針」)です。カタログの方針とは今回のカタログで注力する商品や、カタログが対象としているお客様(読者)のセグメントなどを規定したものです。これらはカタログを作る上で直接の素材となるわけではありませんが、これらの情報が提供されないとカタログを作りはじめることが出来ません。このような要素としては他に「スケジュール」や「カタログ作成ガイドライン」「(景品表示法のような)関連法令/業界指針」などが挙げられます。

さらに業務を実行し、アウトプットを生成する上で必要な要素を広く考えると、いわゆるインプットの他にも「デザイン会社」「デザインソフトウェア」「デザイン用具」といったツール(設備)や人・組織といった要素も思い浮かびます。これらをまとめると以下のようになります。

 

このような業務上の直接の素材ではなく、業務に要求や制約事項を提供する要素を「ガイド」と呼びます。また業務を遂行する上で必要となる支援要素を「イネーブラ」と呼びます。業務はインプット、ガイド、イネーブラの全てを揃えないと遂行できないのです。ですから業務を設計したり、引き継ぎ書を作ったりする場合にはこれらの要素を漏れなく書き出し、業務実行者に伝える必要があります。

参考までに、さきほどのカタログデザインプロセスの周辺要素をマッピングすると以下のようになります。

 

ガイドやイネーブラはどこからやってくるか

 

このようなガイドやイネーブラはどこから提供されるのでしょうか。組織の中にはお客様に製品やサービスを提供するプロセス(いわゆるコアプロセス)以外にもこれらを生成することに特化したプロセスが多数存在します。このようなプロセスを「ガイディングプロセス」「イネーブリングプロセス」と呼びます

 

これらはこれまでもっぱら「マネジメントプロセス」「サポートプロセス」と呼ばれていました。しかし海外では近年、これらを「ガイディングプロセス」「イネーブリングプロセス」と呼ぶことが増えています。私もこちらの呼び方の方がマネジメントやサポートと言うよりもプロセスの役割が分かりやすいため、最近はこちらの呼び方を使っています。

組織に存在するプロセスを一般的な製造業の場合の例で三種類のプロセスで分類すると以下のような構造になります(下記の例ではアフターサービスなどのサービスプロセスは除いています)。

なおガイディングプロセスやイネーブリングプロセスは経営企画や人事、経理等のいわゆるコーポレート部門のみに存在するわけではありません。コアプロセスを受け持つ各機能部門にも多くのプロセスが存在します。下記は一般的な生産部門に存在しているガイディングプロセス、イネーブリングプロセスの例です。

社内の業務を分類し、全体構造を可視化する際には上記のように三つのプロセスで区分して表現することが基本になります。

まとめ

 

ここまでを踏まえて業務の構造を図にすると以下のようになります。

ガイドやイネーブラにインプットやアウトプットを加えた要素は業務手順の外周をとりまく要素になります。ガイドやイネーブラという存在は業務理解においては見落としがちですが、業務フローを書くときもいきなり手順から書くのではなくこれらの要素を洗い出すことで効率的に作成することが出来ます。特にガイドは業務への指針や制約事項を提供するため、これをしっかり認識しないことには手順上の考慮点を見落としかねません。業務理解というと手順の理解に偏りがちですが、業務設計の場合も、現状業務の改善や引き継ぎを行う場合も、まずは「インプット」「ガイド」「イネーブラ」「アウトプット」の四つの要素をしっかり理解するようにしましょう。

 

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