LTSコラム

失敗しないRPA導入『試験導入始め方から本格導入、高度な業務自動化に向けて(後編)』

こんにちは。LTSコンサルタントの吉野貴博です。「失敗しないRPA導入」の後編となります(前編はこちら)。後編では具体的なRPA導入の進め方や、AIと連携した更なる業務自動化の考え方についてご紹介します。

RPA導入の前にやるべきこと

RPAを導入するには、まず対象業務を選定する必要があります。この際、以下3つの前提条件を満たしているとスムーズに進めることが出来ます。

  • 業務の棚卸がされている
  • 業務フローが明確になっている(一定の粒度のフローが可視化されていて、RPA適用可能処理が特定できる)
  • 各業務にかかっている件数と工数が可視化されている

このような、関係者で業務に関する認識を統一し、管理のための基盤を作る活動こそがビジネスプロセスマネジメント(=Business Process Management。以下、BPM活動)です。それぞれを詳しく解説して行きましょう。

業務の棚卸がされている

まず行うべきは業務の棚卸です。RPAを導入する組織(部門等)行っている業務が分からないと、どの業務にRPAを適用すべきかの議論が難しいですし、導入した後のロボットの管理にも苦労します。業務の棚卸の手法および棚卸した業務の表現方法については「プロセスマップ」という手法が活用できます。プロセスマップの説明については、過去のLTSコラムをご参考ください。

棚卸した業務の中からRPAで効果を出せそうな業務を特定していきます。棚卸した業務を基点に業務分解し、より深い階層に降りていくことでより精緻な分析を行うことができます。例として、図表1にパッケージツアーの提供に関する業務の流れと階層を示します(前回コラムの例で見た予約情報の転記業務は、この中の「予約登録」業務に位置付けることができます)。

 

図表1 パッケージツアー提供業務

 

このように、業務を構造的に理解することで、前回のコラムでまとめたRPA適用による効果が見込める業務を抽出しやすくなります。例えば、「予約登録」という業務を詳しく見てみると、「予約内容入力」というRPAで自動化可能な作業があります。さらに「入力内容確認」と「予約内容のWチェック」という業務があり、これは前回の例で見た「人為的なミスが許されず、確認作業が必要」である業務として識別することができます。ですから、この業務はRPA導入の検討対象とすることができそうです。

業務フローが明確になっている(フローが可視化されていて、RPA適用可能処理が特定できる)

棚卸しした業務が可視化されていると、さらに検討を進めやすくなります。情報転記業務の現行業務フローを再掲します。(図表2)

 

図表2 業務可視化・仕分けの例

 

業務フロー可視化の目的は具体的なRPA適用箇所の抽出とその実現可能性の検証です。図表2のような業務フローを見ながら、RPAで実行可能な単純処理業務と人間による判断を必要とする業務がどのように関わっているかを理解し、RPA適用可能な箇所をより具体的に識別します。さらに、このフローでは1処理の中に単純作業と判断が混在していることが分かりますので、このフローにRPAを導入する際には業務の見直しを行った方が良いということも分かります。

各業務にかかっている件数と工数が可視化されている

RPAの効果をしっかり検証するためには各業務にかかっている件数と工数が計測されている必要があります。件数は業務の特性や繁閑の状況を理解し、RPA導入の効果が出る業務を抽出する際に必要となります。また、工数はRPA適用対象業務の抽出や効果予測といった事前準備にも必要ですが、RPA適用後の効果検証にも必要となります。RPA適用の効果(Before&After)をしっかり検証しながら導入を進めるために、件数と工数についても可視化できるよう業務設計することをおすすめします。

ここまででRPA導入の準備が整いました。このようなBPM活動をせずともRPAを導入することはできますが、どこにロボットが動いているか分からず業務のブラックボックス化が進んでしまったり、より効果の出るロボットの構築方法に気づかなかったり、ロボットで本当に業務が効率化しているか分からなかったりといった事態が起きます。導入の目的によって、どの程度まで詳細な可視化や計測を行うかについては判断が分かれますが、私たちとしてはRPAの導入の前にBPM活動をしっかり行うことをおすすめしています。

試験導入の始め方(部門/部署などの小規模で迅速に導入する)

BPM活動を通して業務の棚卸やフロー可視化、計測が行われました。それでは、RPA導入をどのように進めるべきかについて考えてみます。まずはトライアルとして特定の部門/部署等で一つロボットを作ってみましょう。

①対象業務の選定
業務の棚卸により、RPA適用の効果を明らかにしたうえで、まずは、自動化可能で効果が大きいと思われる業務をRPA適用検討対象として抽出します。この際、BPM活動を通して得たプロセスマップや業務フローが役に立ちます。なお、該当業務にRPA適用できるかという視点も大切ですが、そもそもその業務は必要なのかという視点も重要です。RPAで作業が自動化されることが多いエクセルの管理帳票などは実はそもそも作っても十分に活用されていないこともあります。無駄な業務なら、効率化よりも失くしてしまうことが一番です。

②入出力されている情報が識別できる単位での業務可視化
RPA適用対象となった業務は、その業務において何の情報が入出力されているかが分かる単位までより細かく可視化します。これは、図表1のレベル5よりもさらに詳細に記述された粒度です。例えば、「予約登録システムにログイン」は、さらに「予約登録システムのログイン画面を起動」→「ID欄にXXXX(ID)を入力」→「PW欄にYYYY(PW)を入力」→「ログインボタンを押下」と詳細化できます。ここまで可視化することで、ロボットの作成が容易になるだけでなく、ロボットに障害が発生した際に人が代わりに業務実行するためのBCPフローとしても活用することができます。

③RPAツールの適合性検証
実際にロボの開発を始めると、様々な制約が発生します。RPAツールやツールのPC操作認識の仕方(HTMLタグ、座標、テキスト)によって社内システムとの相性から上手く動作しないこともあります。しかもある画面だけ動かないというようにピンポイントでエラーが出る場合もあります。ですからロボットがしっかり動作するかアプリケーションの画面ごとに検証する必要があります。最低限カバーしておくべき項目は以下の通りです。

・起動(各種システムのログイン画面等のURLを認識し、起動することができるか)
・データ抽出(各種システムの各画面に表示されているテキスト、画像、データテーブルを認識することができるか)
・データ入力(各種システムの各画面に設けられたテキストボックスにデータを入力することができるか)
・ログイン/ページ遷移(各種システムにログインできるか/各画面から他画面へ遷移できるか)

この試験導入で得られた社内システムとツールの相性や動作特性は、本格的に導入する際のツール選定やロボット構築ガイドライン策定の重要なインプットとなります。

本格導入に向けて(グループ/全社などの大規模で組織的に導入する)

特定の部門/部署での試験導入で、導入効果やツールの動作の検証を行った先には、企業グループや全社などより広範囲で業務自動化を目指すこともできます。グループ/全社でRPA適用を推進する際のポイントは以下の3点です。

グループ/全社横断のBPM機能の設置
グループ/全社で各社/各部署に散らばった業務設計やロボット開発のノウハウを集約・還元することで、よりスムーズに業務自動化を実現することができます。例えば、例に見た予約登録業務など、グループ他社や他部署の異なるビジネスモデルにおいても似たプロセスを持つことがあります。その場合、業務棚卸や業務フロー可視化の粒度や表現方法を模倣することができます。また、RPAツールの検証についても、同じ情報システムを利用している場合は検証結果をそのまま流用することができることもあります。

RPA導入ガイドラインの統一
グループ/全社で統一されたRPA導入ガイドラインを定めることで、現場主導でのRPA適用への心理障壁が下がります。
前回コラムでお伝えした通り、RPAツールは、マクロ/VBAと比べて業務担当者全般で構築可能であることに強みがあります。しかし、そうであるからこそ、グループ/全社にとってリスクの高いロボットを作成することも容易です。例えば、「予約変更/取消」業務にて予約管理システムのデータを繰り返し削除することができるロボットを考えてみましょう。このロボットが誤作動によりデータを消去してしまうリスクを一部署で測ることは難しいため、業務効率化に資することが明らかであったとしても、RPA適用を諦めてしまうかもしれません。
このような機会損失を避けるため、グループ/全社として、許容できるリスク範囲を明示し、例えば「自部署が主管のシステムには自部署の責任においてデータの編集や削除をロボットに実行させることができる」などのポリシーをあらかじめ設けて置くことができます。こうすることで、現場ではグループ/全社で定められたガイドラインが許す範囲で業務の自動化を自由に検討することができるようになります。

管理コストの集約
グループ/全社で共通の管理サーバーを持ち、そこでロボットを稼働させることで、管理サーバーの稼働監視やキャパシティ管理、ID運用などに係る各種コストを共有化できます。またRPAツールについても各部門が勝手にツールを選定するとコストも余分にかかりますし、運用ノウハウの共有にも弊害があります。ただし、RPAツールはシステムの相性や業務特性に応じて適切なツールが変わるので一つに決めてしまうことは不都合が生じることがあります。そのような場合は管理コストと効果のバランスを見て2~3の標準ツールを決めることが好ましいこともあります。
サーバー型のRPAを使う場合は、管理サーバーは一般的なITシステムと同様に保守・運用が必要です。これらの管理体系についても既存のサーバー管理と合わせて考慮が必要になります。

さらなる業務自動化に向けて

本コラムの最後に、AIなどの先端技術も活用した業務自動化の考え方についても触れてみたいと思います。今後、議論がより具体化していくと思うので、ご参考にしていただければと思います。

目下のところRPAの適用対象は処理論理(アルゴリズム)が比較的シンプルな業務となっていますが、そう遠くない将来にはAIと連携することでより高度な業務の自動化ができるようになると言われています。一般に、定型的な業務の自動化、一部非定型業務の自動化、高度な自律化、と段階を踏んで発展していくと言われています。(※)

「Robotic Process Automation (RPA) AIやロボティクスの発達によるホワイトカラー業務自動化の時代へ」KPMG https://home.kpmg.com/content/dam/kpmg/jp/pdf/jp-sharedservice-outsourcing.pdf

このようにRPAへの市場の期待が高まる中、RPAとAIについてかなり混同した説明を聞くことがあります。ただし、RPAとAIは異なる技術であり、開発主体もバラバラなのが現状です。RPAは実行(Read、Write、Memorize)を代替するソリューションであるのに対し、AIは考える(Think)、学習する(Learn)を代替するソリューションであると考えられます。高度な業務自動化が実現される場合、図表3のように、①RPAがデータをインプット、②AIがデータ構造化/判断、③RPAがデータをアウトプット、④AIが学習・・・とそれぞれの役割を分担するのではないでしょうか。

図表3 業務自動化におけるRPAとAIの役割

 

そうであれば、今後、RPAとAIが組み合わさりパッケージ化されることも考えられます。例えば、シグマクシスとUEIは、ドキュメント自動入力サービスを提供しています。(※)

『シグマクシスとUEI、AIを活用したドキュメント自動入力プラットフォームサービス「ディープシグマDPA」を開発、シグマクシスがサービス提供を開始-ディープラーニングでサービス精度を継続的に向上-』SIGMAXYZ(2017/7/21) https://japan.zdnet.com/article/35104728/

これは、エンドユーザーがスマホなどで撮影した帳票を読み取り、そこに記載されているデータを必要なデータだけシステムに自動入力するサービスです。撮影された帳票のレイアウトを認識する、文字を認識・補正してデータ化するなどの判断が伴う部分にはAIを活用し、補正されたデータをシステムに入力する単純処理にはRPAが活用されています。

終わりに

今回のコラムではRPAと言いつつも業務の棚卸やフローの可視化の重要性も合わせて解説しました。市場では、高度な業務の自動化への期待が過度に高まっていることも否めませんが、どのような技術であれ、業務が整理・整頓されていると比較的スムーズに業務適用を実現できます。RPAを導入することをきっかけにして、そのような基盤整備をできるところから始めてみるのも良いと思います。

LTSでは今も複数のRPA導入のプロジェクトを手掛けています。今後も新たな気付きがありましたら、こちらのコラムで発信していきたいと思います。読んでいただきありがとうございました。

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