LTSコラム

よく分かるビジネスアナリスト 第1回:ビジネスアナリストとは?

こんにちは、LTSのコンサルタントの大井はるかです。
LTSは業務の分析・設計、新しい業務の現場への展開といった「ビジネスアナリシス」を専門としたコンサルティング会社です。このビジネスアナリシスを行う人を「ビジネスアナリスト」と呼びますが、最近「どうすればビジネスアナリストを育成できるのか?」という問合せを頂くことが増えました。そこで新しいコラムシリーズとしてビジネスアナリストとはどのような仕事をしていて、どうやったらなれるのか?どんな人が向いているのか?といったことをご紹介していきたいと思います。題して「よく分かるビジネスアナリスト」です。

ビジネスアナリストの仕事はコミュニケーションのハブ

ビジネスアナリストとはその名の通りビジネスアナリシスの専門家のことで、アメリカをはじめ欧米では一般的な専門職の1つです。2009年にビジネスアナリシスのナレッジ集であるBABOK (Business Analysis Body Of Knowledge)の日本語版が刊行されてからは日本でも認知度が高まっており、ビジネスアナリストに対する興味や、育成を求める声は確実に増えているように感じます。ビジネスアナリストの役割は一般的に以下のようになっています。

 

BAの役割

出典:『ソフトウェア要求 第3版』Karl Wiegers, JoyBeatty 著 日経BP社

 

ビジネスアナリストはもともとソフトウェア開発の現場から生まれた職業で、主たる役割はソフトウェア要求を取りまとめることです。現状の業務を理解し、経営層やユーザーの意図を汲み取り、それらをソフトウェアへの要求という形に組み替えて開発部隊に伝える、つまり“プロジェクトに関わる各所とのコミュニケーションを仲立ちする人”として立ち回ります。最近ではシステム開発の場に留まらず、ビジネスプロセスの専門家として、ITを伴わない業務改善やBPOの現場等などでも活躍の幅を広げています(※)。

※厳密に言えば、ビジネスアナリシスの系譜には、ソフトウェア要求分析から繋がる流れと、BPR(Business Process Re-engineering)やBPM(Business Process Management)といったプロセス志向から繋がる流れの二種類があります。このビジネスアナリシスの歴史については、こちらのコラム「ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話 第8回:ビジネスアナリシスの歴史」を参照してください。

ビジネスアナリスト―日本語に訳すると「仕事(業務)を調査・分析する人」という言葉の響きからは専門知識・技術で身を固めた硬い職業を想像してしまいますが、実際は各所と円滑に柔軟にコミュニケーションをとるソフトスキルがその最大の特徴です。私自身もビジネスアナリストとして仕事をしていますが、コミュニケーションのために時間を使うことが圧倒的に多いです。

例えば、システム開発のプロジェクトに参画した際は、ユーザー企業の各部門に要求に関するヒアリングをしたり、要件をめぐる部署間の調整をしたり、ユーザー企業とベンダーの間に立ってコミュニケーションの仲立ちをするといった動きをします。また業務改善のプロジェクトでは、現状の業務を可視化して課題を分析し、ありたい業務の姿を業務フローに起こしながら担当者の方々と対話します。このように、ビジネスアナリストの仕事の本質は「誰かの意図を、伝えるべき対象に適した形に変換して、伝えていくこと」であり、そのやり取りの連鎖によって、柔らかい経営の意図や市場のニーズから徐々に具体的な要求・仕様が作られ、最終的にビジネスプロセスの変革が実現されます。ビジネスアナリストは、ビジネスプロセス変革におけるコミュニケーションハブそのものなのです。

ビジネスアナリストの肩書は十人十色

ここまでビジネスアナリストの仕事内容を大まかに説明しましたが、「それってSEの仕事じゃないの?」「コンサルタントの仕事じゃないの?」「情報システム部門の仕事じゃないの?」「経営企画部の仕事じゃないの?」・・・etc と、様々な職種や部門が頭に浮かんだのではないでしょうか。それもそのはず、日本ではビジネスアナリストという肩書で仕事をしている人はごく少数ですが、実際にビジネスアナリシスとして立ち振る舞っている人は大勢いるのです。

例えば、システム開発のプロジェクトであれば、SEやコンサルタント、情報システム部門の担当者がその任を負うケースが多いです。また、ITを伴わない取り組みであれば経営企画室や業務部門が実質的にビジネスアナリストのように業務変革を企画・推進することがあります。要はプロジェクトマネージャーと同じで、ビジネスアナリストは固有の職業であるとともに、チームの中の誰かが担うべき役割でもあるのです。よって、肩書は違えどビジネスアナリストの役割を担って働いている人は日本でも一定数存在します。そして、この「実態として役割は存在しているのに、職業として確立されていない」という点が問題でもあります。

というのも、職業として確立されていなければ専門的な人材育成の体系を確立することが難しくなります。また、プロジェクトを立ち上げる時にそのような職種が必要だという認識がなければ、誰がビジネスアナリストを担うのか明確に決められず、責任の押し付け合いになったり、ひどい場合には機能そのものが抜け落ちてしまうこともあります。日本のシステム開発プロジェクトといえば、かつてはその7割が失敗し、今でも3割のプロジェクトは失敗に終わるなど成功率はけして高くありません。そして、その原因の多くは要件定義にあると言われています。要件定義をファシリテートするのがビジネスアナリストの仕事であることを考えると、日本のシステム開発プロジェクトが失敗するのは、前述のようにビジネスアナリストが職業として、そして明確に必要な役割として認知されていないからではないかと思います。

たとえ名ばかりでもプロジェクトマネージャーがいないプロジェクトは聞いたことがありませんが、同じように、ビジネスアナリストもプロジェクトマネージャーのように業務変革のプロジェクトには必ず体制図に書かれるようになったら、日本のシステム開発プロジェクトの成功率はもう少し高まるのではないでしょうか。そのためにも、ビジネスアナリストの認知度が高まり、専門教育を受けた人材が増え、職業として確立されるようになってほしいと思います。

次回は、日本ではだれがビジネスアナリストの役割を担っているのかということについて書いてみたいと思います(⇒「第2回:日本ではビジネスアナリストはどこにいる?」へ)。次回も是非ご一読いただければ嬉しいです。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

 

関連書籍のご紹介◆

ビジネスプロセスの教科書

※Amazonで購入する。

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の効果が出なかったり、システム開発がトラブル続きだったりと、ビジネスプロセスマネジメントが上手くいっていないと多くの課題を引き起こします。
2015年7月に刊行した『ビジネスプロセスの教科書―アイデアを「実行力」に転換する方法』では、このような問題を解決するために、ビジネスプロセスとは何か、どのようにマネジメントすれば良いのか等をわかりやすく解説しています。また、著者がこれまでにお客様企業の現場で経験してきたビジネスプロセス変革の事例も多く紹介しています。ユーザー企業側で組織変更、情報システム導入、アウトソーシング活用といったビジネスプロセス変革を行う予定のある方はもちろんシステム開発やアウトソーシングベンダーの担当者の方も必見です。

お気軽にお問い合わせください

03-5312-7010

お電話でのお問い合わせ受付時間 9:30〜18:00