LTSコラム

ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話 第10回:業務改善を進める際にはまず組織とプロセスの関係を整理する

こんにちは、LTS執行役員の山本政樹です。ビジネスプロセスの教科書のこぼれ話第十回です。前回のコラムでは「プロセスマップ」を作成することのメリットについてお話しました。プロセスマップに示された各プロセスはで、KPI設定の単位になり、それは業務改善を進める上での単位ともなりえます(「業務改善」とはKPIを元にプロセスの能力を高める活動とも言えます)。

では、プロセスの構造を明確にしたらすぐに業務改善活動を始められるでしょうか。多くの場合、プロセスとプロセスを管轄する組織の関係は単純ではなく、まずこれらの関係を整理する必要があります。今回は業務改善を進める際のプロセスと組織の関係についてお話します。

プロセスと組織の関係性のパターン

 

プロセスと、それを管轄する組織の関係性には次の四つのパターンがあります。そして中にはプロセスと組織の関係性を可視化した上で整理しないと業務改善を進めることが困難になるパターンもあります。

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ではこれらのパターンを一つずつ見ていきましょう。

パターン①:プロセスと組織が一対一

 

もっともシンプルなパターンはプロセスと組織の関係性が一対一となる関係です。プロセスの責任組織は明確で、プロセスに与えられたKPIはほぼそのまま組織の目標となります。よって組織単位で進める改善活動もそのままプロセスの改善活動となります。この場合はプロセスと組織の関係性を整理する必要もなく、改善活動も速やかに始められると思います。

パターン②:プロセスと組織が多対一

 

次のパターンは特定の組織が複数のプロセスを管轄しているケースです。プロセスから見れば紐づく組織は一つなので、この場合も関係性はシンプルです。このパターンでも改善活動を始めることは容易でしょう。ただ一つ気を付けなくてはいけないのは、改善単位をプロセス単位でしっかり分割して管理しておかないと、後で面倒なことになることがあります。

たとえば大きく三つの製品があるとして、これまでは「製品A事業部」というように担当製品ごとに組織が作られていたとします。製品Aに関わる営業、物流、生産といったプロセスを一つの「製品Aプロセス」という単位で括って業務を管理していると、組織改編があって営業、物流、生産の機能別組織に再編された際に、これまでの文書を分割して再構成しないといけなくなります。もともと「製品×機能」のより細かい単位で管理していれば、再編された新営業部門は「製品A営業プロセス」「製品B営業プロセス」「製品C営業プロセス」の担当となる、というようにプロセスに紐づく組織が変わるだけです。このように今後のメンテナンスを考慮した適切なプロセス単位での改善活動を意識する必要があります。

パターン③:プロセスと組織が一対多

 

さて三つ目のパターンこそが改善活動を進める上でもっとも問題となるケースです。一つのプロセスを複数の組織が分担して実施している場合です。このようなケースでは改善活動を行うにしてもプロセスの責任組織が曖昧になりがちで、組織間の利害対立も起こります。このようなプロセスと組織が一対多になるパターンも、さらに二つに分けられます。

一つ目は同じプロセスを異なる組織が独立して実施している場合です。分かりやすいのは営業組織で、営業一課、二課・・・というように基本的なプロセスは同じでも担当顧客や地域、所属する社員の管理のしやすさ(いわゆるスパンオブコントロール)から、複数の組織に分かれていることは珍しくありません。このような場合、改善活動を行いたくても組織間の利害対立やリーダー不在から活動が進まなかったり、各組織が自分たちに都合の良い改善活動を行ってしまったりで、同じはずだったはずのプロセスが組織ごとに異なるプロセスに意図せず変わっていってしまう場合があります。

二つ目は一つのプロセスを複数の組織が役割分担しながら遂行しているケースです。例えば製造業で製品カタログを作る部署は、製品開発部署から製品情報を提供してもらい、広告を担当する部署と掲載する情報を連携しながら製品カタログを完成させます。このようなケースではどこか特定の部署だけでは改善活動は成り立ちません。例えばカタログのリリースまでのリードタイムを縮めたいと思えば、製品開発部署から情報を速やかに出してもらう、広告担当部署との打ち合わせタイミングを早めるなど他の組織を巻き込む必要があります。

このどちらのケースでも共通するのは業務改善の責任者が誰であるかをしっかり定めた上で、責任者に対して組織を横断して指示をする権限や後ろ盾(経営者の指示など)を与えてあげる必要があることです。一つ目の営業組織のような例では、プロセスの実行を担う各営業課とは別に営業推進化、営業企画課といったプロセスの管理に責任を持つ部署を別に置くことも選択肢になります。

パターン④:プロセスのオーナーが不明

 

最後のパターンはそもそも責任組織が不明なプロセスです。そんなことがあり得るのか?と思われるかもしれませんが、これがあります。もっぱらITにより自動化されたプロセスに見られます。

ある会社では、資材を消費するとその残量に応じて自動的にサプライヤに発注がかかる仕組みになっています。業務改善の活動を行うにあたり、このプロセスのオーナーを整理しようとしたのですが誰も明確に答えられません。担当部門のはずの生産管理部門の担当者は「そのプロセスのオーナーはIT部門ではないのか?」と言います。当然のことながらそんなことはなくIT部門は業務側の担当者の要求に従って情報システムの保守・運用を担っているだけです。

このプロセスはかなり昔にオーナー部門である生産管理部門の要求に従い、IT部門が自動化の仕組みを構築しました。長い間、特にトラブルや変更要求もなくシステムは稼働を続け、生産管理部門の担当者も代替わりし、いつの間にかオーナー部門からオーナーシップが消えていきました。その結果が「オーナーはIT部門では?」という発言につながるわけです。

このような症状はプロセスの自動化(IT化)に従って、どんどん増えています。またコールセンターやBPOの現場でも、発注者である部門がアウトソーシングベンダーに業務を任せっきりにしてしまい、業務の実態を何も語れないということもあります。

業務改善の行う場合はまずプロセスと組織、ITの関係性を明確にする

 

各プロセスが全て上記のパターン①か②で運営されているということは稀です。そもそも組織にはプロセスと異なる役割もありますから、プロセスが同じでも企業規模が大きければ人員規模などに応じて組織はある程度分ける必要があります。ですからパターン③のような一つのプロセスの元に複数の組織が集う状況が別に「悪」というわけではありません。

問題はプロセスと組織の関係性や、プロセスのオーナー部署が整理されないまま改善活動をはじめてしまうと活動が止まってしまうことです。もちろん風通しがよく、組織連携が自発的に行われるような企業であればうまくいくこともありますが、多くの会社で組織間の壁は厚く、組織横断での調整が必要になると担当者たちの動きはどうしても鈍くなってしまいます。ですから経営者はプロセスの構造を明確にし、関係する組織を括りだし、活動の責任者(ないし責任部署)を明確にした上で、関係組織全体に「協力してこのプロセスを改善せよ」と指示を出さないといけないのです。

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これはITによって自動化されたプロセスも同じで、オーナーが不明確な自動化されたプロセスはオーナー部門を再定義する必要があります。とはいえ、このようなプロセスの改善をIT側の担当者の支援なしで行うことも難しいので、オーナーと対応するシステム機能やIT部門担当者を整理する必要があります。以下は構造化したプロセスに対してオーナーとIT部門担当者を整理するプロセスリストのフォーマットの一例です。

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経営者は各部署に「業務改善せよ」と指示を出すだけで、指示を出された部署の側は自分たちでは活動を進められず右往左往しているケースをよく見かけます。組織がその壁を超えて連携できる企業文化の醸成は別の課題としてあるかもしれませんが、組織を超えて動くには経営の後ろ盾のもと体系だった取り組みの構造化が不可欠です。

 

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