LTSコラム

よく分かるビジネスアナリスト 第2回:日本ではビジネスアナリストはどこにいる?
2016.9.9

こんにちは、LTSのコンサルタントの大井悠です。前回から期間が空いてしまいましたが、「初めてのビジネスアナリスト」の続編をお送りします。前回のコラムではビジネスアナリスト(以下BA)がどのような職業なのかを簡単に紹介しました。BAは、日本ではまだ一般的な職業ではありませんが、そのニーズは間違いなく高まっています。

前回のおさらい

まず本編に入る前に、もう一度BAとはどんな職業なのかおさらいしたいと思います。ビジネスアナリシスに関する国際団体IIBA(International Institute of Business Analysis)では、BAを以下のように定義しています。

「BAとは、ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動家」

かみ砕くと、BAとは「経営者や各部門といった関係者のビジネス上のニーズを引き出し、それらを『要求』として取りまとめ、要求の実現に向けてPMやSEといった人たちと協力して変革を進める人」と言えます。

実は日本には潜在BAが沢山いる

“BA”という言葉だけ聞くと、急に登場した外国生まれの新しい職業で、まだ日本では一部のコンサルティング会社やITベンダーにしか存在していない稀有な存在のように思われるかもしれません。しかし、よくよくその仕事内容を考えてみると、BAという肩書でなくても実質的にBAと同じ仕事をしている人は日本企業にも数多くいます。本コラムでは、このような人を潜在BAと呼びたいと思います。

では、潜在BAとは、具体的にはどんな人でしょうか?経営者や部門の意向を組んだビジネスニーズをまとめ、要求を策定して実際に業務を変えていく役割を担う人…と考えてみると、いろいろな人が思い浮かびます。例えば経営企画室に所属して業務変革の企画・推進をする人、情報システム部門に所属してシステム開発プロジェクトを企画・推進する人、新規事業部に所属して新たに業務設計をしている人も条件に当てはまりそうです。こうした人が日本中にいったい何人いるのかは分かりませんが、日本の企業数を鑑みると数万人はいそうです。もし、そのうちの何割かが本格的なBAとして企業内で活躍していったら、日本企業の様相も変わりそうですよね。しかし、彼らが本格的なBAとしてキャリアを伸ばすには、いくつか越えなければならない壁があります。

日本企業で働く潜在BAが本格的なBAになることが阻まれる理由として大きく2つ挙げてみます。

日本企業ではBAは期間限定

1つは、企業の中にビジネスプロセスの管理・変革を専門に扱うポジションが少ない、もしくは存在しないことです。その結果、何らかの変革プロジェクトを立ち上げる際には、経営企画室や各部門から人が集められ、期間限定でBAのような役割が置かれます。このような人の多くはプロジェクトが終われば元の仕事に戻るか、他の定常的な仕事に移るため、プロジェクトでのBA経験が活かされることはあまりありません。また日々、システム開発という形で変革プロジェクトに従事する情報システム部門の担当者も、本職はシステムの開発、保守、運用ですからBAとしての仕事は副次的になりがちです。

弊社のコンサルタントはこの手の変革プロジェクトの支援を依頼されることが多く、私も何度も参画経験がありますが、ご一緒させていただくお客様企業のメンバーは大きく2つのタイプに分かれます。どうせ期間限定の仕事だから…と、外部のコンサルタントやSEに任せきりになる方か、未経験から業務フローの見方などを勉強して一緒に頑張って下さる方です。BAという役割が社内で確立されていないがゆえに、限定的な仕事と捉えて他人任せになってしまうのも、かたや折角やる気があって勉強したのに次の仕事に活かされないのも、どちらに非常にもったいないことだと思います。

日本企業にはBAを育てる仕組みがない

ユーザー企業内でBAが育ちにくいもう1つの理由は、専門的な教育体系が用意されていないことです。BAの仕事はかなり大雑把に表現すると、経営層や各部門、ITベンダー等のコミュニケーションのハブとなってビジネスの変革を推進することであり、BAの本質はソフトスキルにある、と前回のコラムで書きました。ソフトスキルと言うと「人間力」のようなふわふわしたものを浮かべるかもしれませんが、そう簡単なものではありません。

幅広い層の意図を組んで要求を切り出すには、自社のビジネスの仕組みや展望を理解し、経営層から現場レベルまで俯瞰してビジネスを眺める視点が求められます。これらは一朝一夕で養われるものではありません。それなりの経験年数を割き、BABOK、BPMNのような体系化された専門知識を学ぶ必要があります。BAは自然に育つのではなく、企業側が意思を持って育てる環境を用意しないと育たないのです。せっかく潜在BAがいても、そうした環境なしでは本格的なBAに育てることは困難と言えます。

日本企業は潜在BAを活用できるか?

ここまでで、日本企業で本格的なBAを育成することは難しい理由をお話ししました。まとめると、企業にBAを育てる準備が整っていないことがその最大の理由です。そもそも、日本企業では業務を変化するものとして捉え、定常的にビジネスプロセスを管理・改善していくという思想があまり見られませんそのため専門の部門や役職も当然なく、一度作った業務はそこで一旦固定され、情報システムの入れ替えや経営層から業務改革の指令が下りない限りは放置されがちです。ですから、必要に追われてプロジェクトを立ち上げた時に急ごしらえでチームを作り、号令をかけて大量に業務フローを書かせたり、現行システムの仕様書をかき集めたり(時には見つからないこともありますが…)ということが起きるのです。これではプロジェクトの成功も危ういですし、BAが社内で育つのも難しいでしょう。

ここ数年、社内でBAを育てたいとおっしゃる企業の声をよく聞きますが、BAを育てる前に、まずは企業側が業務とは常に変化し定常的に管理していくべきものだと認識を変え、その領域をつかさどるBAがきちんと育つ環境を意図して作っていくべきです。BAを育成するためには専門知識・スキルはもちろん、キャリアパスや部門間コミュニケーションの取り方といった全社的な組織の仕組みや風土を変えていく必要があり、企業側の姿勢が非常に問われるのです。社内でBAをきちんと育成して機能させることに成功している企業では、必ずこうした組織の仕組みや風土がきちんと整えられています。

BAは社内でこそ育てるべき!

日本ではBAは外部のコンサルティング会社やSI会社からユーザー企業に対して、変革プロジェクトを行う時にだけ派遣されるケースが多いですが、私はBAは自社の中でこそ育てるべきであり、変革プロジェクトも自社のBAが中心になって推進すべきだと強く思います。普段、コンサルタントとして外部からBAの仕事をさせていただいていますが、BAの仕事はお客様のビジネスを理解し、寄り添いながら進めてこそ成果を発揮します。そしてビジネスプロセスというものは一度作ったら終わりではなく、継続的に維持管理していかなければならないものです。外部から一時的にプロジェクトに参画する立場だと、ビジネスモデルや業務の理解にそれなりに時間も要しますし、関わる期間が決まっているので、その後の経過に関われません。外部の人間がユーザー企業の中でBAとして価値を発揮するには限界があるのです。ですから企業は自社できちんと人を育て、継続的に自分たちのビジネスプロセスを維持管理していくべきだと思います。もちろん大きな取り組みでは社内にいるBAたちだけでは人手が足りなくなることもありますし、外部の知見を活かしたいと思うこともあるでしょう。そういう時はぜひ、私たち社外のBAたちにもお声掛けいただければと思います。

 

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