LTSコラム

システム開発は接客業! 第12回:顧客満足度を高めるためのポイント

ここまで、顧客満足とは
「顧客の事前期待に対して、実績評価が大きい」状態ということ
・お客様は成果品質プロセス品質の双方を評価していること
・お客様毎で異なる事前期待に効率的に応えるためにいくつかのタイプに分類する方法
等をご説明しました。今回は、顧客満足度を向上するためのポイントとして、プロセス品質を高めるために必要な観点についてお伝えします。

 

◆その①:顧客満足度調査結果の見方に気を付ける◆

今や多くの企業で実施している顧客満足度調査(以下CS調査)ですが、みなさまはその結果をどのように評価されているでしょうか。5段階評価の場合、上位二つ(5点と4点)の全体との割合を判断基準として持っている企業が多いのではと思います。ところが、ある調査では5点をつけたお客様と4点をつけたお客様のリピート率の差がかなりあることがわかっています。2000年代前半に米国ゼロックスのCEOとして社内改革を行ったアン・マルケイヒーは、顧客満足度調査で「満足した」と答えたお客様の75%ものお客様が実際には離反していると述べています【1】。一方で「とても満足した」と答えたお客様の契約継続率は「満足した」と答えたお客様の6倍だったそうです。

【1】 『なぜ危機に気づけなかったのか─ 組織を救うリーダーの問題発見力』マイケル・A・ロベルト著、飯田恒夫訳、英治出版、2010年

私が所属するエル・ティー・エス(以降LTS)でもCS調査を行っていますが、ある年の調査結果を集計したところ、満足度が5点満点のお客様のコメント欄にはお褒めの言葉しか書いてありませんでしたが、4 点をつけたお客様は、お褒めの言葉だけではなく必ず改善点も記入されていました。CS調査をすると、2点や1点をつけた方が何に不満を持っていて、それを改善するにはどうしたら良いかに目が向いてしまいがちです。もちろんそういった改善も必要ではあるものの、2点や1点の評価を3点や4点に引き上げたとしても、本当の意味での顧客満足は得られない可能性が高いのです。お客様にリピートして頂くためには、4点をつけた方が何を期待していて、どれだけその期待に応えたら5点をつけて下さるのかも検討すべきだと言えます。

なお、ITサービスのような長期でお客様とお付き合いをする場合は頻度多めにCS調査を実施した方が良いでしょう。フェーズの変わり目でCS調査アンケートへご協力頂くか、可能であれば直接ヒアリングするとより具体的な期待や不満を確認することができます。私の経験ですと、webアンケートと実際にヒアリングして拾える情報量にはかなりの差があります。プロジェクトの中間CS調査で伺った際に「実はまだ営業段階のころ、LTSのみなさんがうちの会社のメンバーに馴染んでくれるのか不安でした(笑)」と本音を言って下さったことがあり、営業時のプロセス品質について考える大きな気付きを頂いたことがあります。その情報はすぐに社内で共有し、「提案時には安心感を持って頂けるようにきちんとわかりやすく説明するだけでなく、フレンドリーさも伝わるようにする」という教訓も社員で共有しました。このように、調査結果とそこから得た大事な気づきを社員で共有することが、会社全体のプロセス品質向上につながります。

 

◆その②:プロセス品質は「属人的なスキル」だと思って諦めてはいけない◆

プロセス品質の重要性をお話しするとよく「プロセス品質が大切なのはわかるのですが、共感性や柔軟性は個人の資質や性格に由来するものであって、会社としてはどうしようもないのではないでしょうか」というお言葉を頂きます。確かに、サービス業の品質には個人の資質が深く関係していますが、だからといって諦めてしまってはプロセス品質の向上は期待できません。企業として、顧客満足向上につながる仕組み作りと人の採用、教育に力を入れる必要があります。

まず、企業全体で取り組む顧客満足向上の施策は、社員に直接働きかける仕組みと、社員の活動を支援する仕組みの両面で進めます。情報システム開発に限らずサービス業は、人の働きが、サービス品質を高める上で極めて大切になります。したがって、人財像の定義や資質の高い社員の採用、OJT、研修など、社員の質を高める取り組みは重要です。そして、人を育成するためには、社員の振る舞いを正しく評価をする仕組みや、表彰制度のような顧客満足向上に貢献した社員を公式に認める仕組みも必要です。社員の活動を支援する仕組みの中で、特に大切なのは情報共有の仕組みです。サービスの品質が属人化しがちなサービス業において、情報共有は担当者間のノウハウの差を埋めサービスを均質化する重要な役割を果たします。情報共有には広い意味が含まれます。トップメッセージの発信、全社啓蒙活動、良い事例や悪い事例の共有、お客様情報の共有、サービスノウハウの可視化やマニュアルの整備などです。ちなみに書籍の中では情報共有の基盤として「お客様データベース」と「接客マニュアル」の必要性について語っています。どちらもサービス業界(ホテル等)では当たり前な基盤ですが、ITサービス業ではあまり整備されていないのが現状です。

次に採用・教育です。これらはどちらも重要で、資質のある人(共感性や柔軟性を既に持っている人)を採用したうえで、さらに教育や育成の仕組みを整える必要があります。つまり、共感性や柔軟性の向上は「会社としてどうしようもない」のではなく、会社の人事制度の問題なのです。お客様志向を持った社員を採用し育成しようと思うと、求められる行動や姿勢やスキルを定義し、人財像を具体化する必要があります。求められるスキルは技術力だけではなく、お客様志向やコミュニケーション力といった広い範囲の定義が必要になります。昨今、仕事の成果には技術スキル以上にヒューマンスキルが大切と言われています。筆者(山本)の会社エル・ティー・エスには、どのサービスを担当する社員にも必要となる共通スキルのリストがあります。全体で50のスキル項目があり、そのうち半分は非技術スキルです。この中には「成長志向」や「自己管理」といったスキルというより姿勢や価値観といったものも含まれています。なお、このスキルリストは業務分析の方法論であるBABOK®に記載されている共通コンピテンシーをもとにしています。

エル・ティー・エスがこのスキル表を作る際に意識したのが、曖昧な言葉を適切に分解することです。たとえば、プロセス品質を向上するためのカギとなるコミュニケーション力とは、実は多くのスキルの集合体です。他人に自分の意図を適切に説明する力もコミュニケーション力ですし、会議でうまく議論をファシリテーションする力もコミュニケーション力です。ですから、これらのスキルをより詳細に分解し、スキルの内容が明確になるようにしてあります。たとえば、会議をうまく運営するために必要な力も、スキルリストと照らすと次の図のようになります。もちろん、この大前提には高い共感性が必要です。

スキル

 

◆その③:社員の働きをプロセス品質の観点でも適正に評価する◆

顧客満足度調査をはじめ顧客満足向上活動を行った後には分析と評価を行うことになりますが、特に大切なのは正しく行動した社員を評価することです。総じて情報システム開発における評価は、売上や技術力といった定量化しやすい評価項目だけで構成されがちです。短期的な売上を確保するために、高いリスクのある開発を「絶対大丈夫です」と言ってしまったり、自社のソリューションが必ずしもお客様にとって最適解でないとわかっているのに自社のソリューションで解決しようとしたりといったことは情報システム産業ではよく見られることです。このような形で売上に貢献した社員を評価するのか、何等かのペナルティ的な指導をするのか会社の姿勢が問われます。状況によっては上司が部下のお客様に対する姿勢を逐一確認することができない場合もあると思いますが、社員同士で評価をする制度「Good Jobカード」を導入している企業もあります。このカードをきちんと人事評価につなげれば、プロセス品質をより適正に評価できるようになります。

 

◆その④:実は経営トップのお客様に対する姿勢が重要◆

これまでお話したように現場の従業員が高いプロセス品質を発揮することは、サービス品質の確保や業績向上といった企業経営の根幹に関わる事項です。そうであれば、これを推進するのは経営トップの責任です。活動の主体は現場の社員であったとしても、トップの理解なくして改善の取り組みは進められません。経営が行うべきことは多岐にわたりますが、大切なのはトップもお客様と接することです。顧客満足向上の取り組みで大きな成果をあげた先進企業ではどこもトップがお客様に対して直接接点を持っているので、情報システム開発会社の経営トップにも現場のお客様の意見も聞いてもらいたいと思います。自社の社員が最も密接に関わるのは「プロジェクト推進者」や「仕様要求者」の方達です。お客様の経営トップはどうしてもシステム開発の成果品質しか見ない傾向にあるので、足元のサービスプロセス品質を向上するためには現場のお客様の意見が重要です。顧客満足度調査などの間接的な意見に耳を傾けるだけでなく、ぜひとも直接お客様の意見を聞いてみてください。

 

次回はいよいよ最終回「顧客共創型サービスモデルを実現するために」です。ITサービス業に関わる方たちへの筆者からのメッセージもありますので、最後までお付き合いください!

※下記画像をクリック頂くと、Amazonの商品サイトに移動します。

お気軽にお問い合わせください

03-5312-7010

お電話でのお問い合わせ受付時間 9:30〜18:00