システム開発はサービス業です システム開発は接客業⑤のサムネイル
デジタルテクノロジー

システム開発はサービス業です システム開発は接客業⑤

このコラムは、株式会社エル・ティー・エスのLTSコラムとして2015年2月から連載を開始した記事を移設したものです。

ライター

山本 政樹(LTS 執行役員)

アクセンチュア、フリーコンサルタントを経てLTSに入社。ビジネスプロセス変革案件を手掛け、ビジネスプロセスマネジメント及びビジネスアナリシスの手法や人材育成に関する啓蒙活動に注力している。近年、組織能力「ビジネスアジリティ」の研究家としても活動している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

これまで一般的なサービスや顧客満足について語ってきました。 事前期待顧客満足との関係性や、成果品質プロセス品質についての理解を深めて頂けたかな?と思います。今回からシステム開発の顧客満足について一緒に考えていきましょう。

みなさんは「サービス業」というと何をイメージされますか?ホテルや飲食業のようないわゆる“接客業”を想起される方が多いのではないでしょうか。さらに質問です。システム開発は何業にあたるのでしょうか?ハードでは無いけどシステムを作っているから製造業?
ここで、サービスの特徴とは何だったか思い出してみましょう。サービスには4つの特徴があります。その4つの特徴をシステム開発に当てはめてみると実は、システム開発は典型的なサービス業であることがわかります。

システム開発は目に見えにくい

サービスの1つ目の特徴は「サービスには、カタチがない」ということでした。システム開発もこの特徴に当てはまります。どのベンダーにシステム開発を依頼すればいいのか困るのは発注する側の共通の悩みです。システム開発において開発担当者の能力がその成否を大きく左右することは誰でもわかりますが、短い提案プロセスの中で担当者の能力を見極めることは至難の業です。それどころか、提案時の担当者とサービス時の担当者が違うことすらよくあります。

お客様はまだ目に見えぬ将来のシステムを開発してくれる業者を選定するために数社から提案を受けます。中には初めてシステム開発に関わるお客様もいて、提案内容を理解して良し悪しを判断することも難しいのに一社を選ばなければならず悩んでいる場合もあります。

私は過去にお客様から「提案書に書かれている流れでプロジェクトを進めることが正しいのだとは思うが、正直想像もつかないし経験のない自分には判断ができない。」と言われたことがあります。かかる費用もこれまでの取組とは比べ物にならないほど高額であり、発注先選定の失敗は許されないというプレッシャーに押しつぶされそうな様子でした。初めて行った飲食店が事前期待以下だったら「もう二度と行かない」で済みますが、システム開発は同じようにはいきません。

システム開発は、在庫をもつことができない

サービスの2つ目の特徴は「サービスは、生産と消費が同時」でした。人員と案件の数のバランス維持が難しいということは、システム開発ベンダーの永遠の悩みです。余剰人員が問題であることは言うまでもなく、案件の数が多すぎても人員がいなければお客様の期待に応えられず、そのことがお客様との信頼関係を壊してしまうことすらある難しい業種です。これはまさに生産と消費が同時で在庫を持つことができないというサービス業の特徴ゆえに生じる悩みです。

システム開発は、最終的に納品するシステムだけでなく数か月~数年かけて進めるプロジェクトの過程そのものがサービスです。そのサービスを提供するための人員を常に適度な状態で抱えておくことは非常に難しいといえます。

システム開発の原材料は、お客様の課題

サービスの3つ目の特徴は「サービスは、お客様ごとに個別化」でした。システム開発の原材料はお客様の個別の課題です。たとえば、業務を自動化して効率化したい、過去のノウハウを蓄積することで製品開発のリードタイムを短縮したい、会社の経営情報を早く正確に把握したいなど、課題はさまざまで極めて個別的です。

システムを導入(または更改)する理由はお客様毎でまったく違いますが、共通していることはそれぞれ何かしらの課題を抱えていて、システム化をすることで解決したいと期待している点です。当り前ですが、課題を抱えていないお客様からシステム開発の相談を受けることはないということです。

システム開発は、お客様との共同作業

サービスの最後の特徴は「サービスは、お客様との役割分担」です。言うまでもなく、システム開発はお客様との共同作業です。プログラミングのようにお客様が関与しない作業もありますが、要件定義から始まって受け入れテストまで、短くても数週間、長いものでは年単位で密接なコミュニケーションを取りながら共に課題解決のために汗を流します。

システム開発は「お客様との共同作業」と言われると、もしかしたら違和感のある方もいらっしゃるかもしれません。システム開発の現場に関わる人間を大きく分けると“お客様(発注者)”と“開発ベンダー(受注者)”の2種で、その関係は「主従」であり、対等な関係の人間が机を横に並べて一緒に作業する「共同作業」とは違う。そんなイメージが強いかもしれません。でも実際のプロジェクトではお客様側にも色々と情報を整理して要件を出してもらう必要があったりと、チームメンバーとして担って頂く役割は確実にあります。その役割をお客様に認識頂いて一緒に作業を進めていけるかどうかがプロジェクトの成功を大きく左右する要因になります。

ここまでで、システム開発もサービス業であるとご理解いただけましたでしょうか。お客様との関わる期間の長さや濃さを考えるとシステム開発は究極のサービス業と呼べるかもしれませんね。さて、システム開発=サービス業と判明したところで思い出して頂きたいことがあります。サービス業の顧客満足とは、成果品質とプロセス品質に対する評価のかけあわせです。システム開発の世界で成果品質(QCD)についてはこれまで散々議論されていますし、きちんと指標をもってプロジェクトを進めている企業も多くあると思います。それに対してプロセス品質についてはどうでしょうか。

上記はほんの一部の例で、システム開発の現場で気を付けなければならないプロセス品質はたくさんあります。これまで成果品質に強く寄った品質チェックをしていた企業にとって、プロセス品質にも注目して新たな品質向上施策を考えることはこれまでよりも顧客満足度を高められるチャンスをつかむことになります。

覚えていますか?サービス業のプロセス品質6種類。次回はシステム開発の現場で求められるプロセス品質を種類別に見ていきます。みなさんも次回までに考えてみてください!