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「顧客満足」って何だろう? システム開発は接客業③


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このコラムは、株式会社エル・ティー・エスのLTSコラムとして2015年2月から連載を開始した記事を移設したものです。

ライター

山本 政樹(LTS 執行役員)

アクセンチュア、フリーコンサルタントを経てLTSに入社。ビジネスプロセス変革案件を手掛け、ビジネスプロセスマネジメント及びビジネスアナリシスの手法や人材育成に関する啓蒙活動に注力している。近年、組織能力「ビジネスアジリティ」の研究家としても活動している。(2021年6月時点)  ⇒プロフィールの詳細はこちら

前回のコラムでは“「サービス」って何だろう?”という内容をお伝えしました。今回はサービスを提供する側にとって重要な「顧客満足」について、改めて考えてみたいと思います。「顧客満足度No.1!」等、色々なところで見たり聞いたりするようになりましたが、具体的に顧客満足とはどのようなものなのでしょうか。

 「顧客の事前期待に対して、実績評価が大きいと顧客は満足する」

お客様は商品やサービスを利用する際に、なんらかの期待を持っています。それを「事前期待」と呼びます。この事前期待に対して使用後の「実績評価」の方が大きいと、そのお客様は満足してリピートしていただけるようになります。

お客様が「予想よりも良いサービスを受けられた!」と感じた時が“顧客が満足している状態”だと言えます。反対に「予想していた程では無かった、ガッカリ」となってしまうと二度とサービスを受けようとは思ってもらえません。また「予想通りだったな」と印象が薄かった場合は競合他社にうつられてしまう可能性が高くなります。従ってサービス提供側は常に、お客様の事前期待を上回る実績評価を得られるように努力しなければならないのです。

また、顧客満足を語る上で重要なポイントがあります。顧客満足は「事前期待と実績評価の相対関係」で決まるということ、しかも事前期待はお客様毎で違うということです。第三者から見て全く同じレベルのサービスを提供したとしても、事前期待によって満足するお客様もいれば不満に思うお客様もいるのです。サービス提供側はいかに高い実績評価を得るかということに重点を置いた改善活動を検討しがちですが、その前にまず自分たちのお客様の事前期待はどのようなものなのかを把握することから始めなければいけません。

では、今度は事前期待をもう少し詳しく見てみましょう。

上記は事前期待を3つの構成要素に分解したものです。最高級の評価を得るためには、2つ目の「事前期待の持ち方」に着目することが大切です。4つの事前期待の持ち方について詳しく見て行きます。

 1. 共通的な事前期待は、すべてのお客様が共通的に持っている事前期待です

飲食店は清潔であって欲しいとか、交通機関には安全第一で運行して欲しい等の期待は老若男女問わず誰でも期待することであり、当り前品質と捉えることもできます。ということは、共通的な事前期待に応えられないとクレームに繋がる可能性が高いということです。

2. 個別的な事前期待は、それぞれのお客様で異なる事前期待です

Barに来るお客様の中には「バーテンダーとの会話を楽しみたい」人もいれば、「一人で静かにお酒を飲みたい」人もいます。それぞれ違う事前期待を持っているということですね。優秀なバーテンダーはお客様毎の期待を記憶してそれぞれに合った対応をしています。また、高級ホテルではお客様の個別的な事前期待をデータベースに登録しています。

例えばあるお客様の部屋の冷蔵庫から毎日特定の飲料が無くなっていた場合、「お客様がお好みの飲料」として記録しておきます。次に宿泊された際、データベースを確認した担当者が部屋の冷蔵庫にお好みの飲料をたくさん入れておけば、お客様は「あ!私の好みを覚えてくれていた!」と感動してしまいます。このように、組織的な取組みを進めている企業は多くあります。

 3. 状況で変化する事前期待は、同じお客様でも状況によって変わる事前期待です。

これは私の話ですが、行きつけのレストランがあり、毎回食後にアイスティーを注文していました。それがとても寒い日に行った時「今日はホットティーにしますか?良ければ先にお持ちしますので体を温めてはいかがでしょう。」とホールスタッフの方が提案してくれて大変感動したことがあります。このような状況で変化する事前期待に対応するにはお客様の状況を察知する着眼点を整理し、サービスセンスを身に着ける教育をする必要があります。

4. 潜在的な事前期待は、お客様が思いもよらない事前期待です。

これは少々難しいのですが、「思いもよらなかった」、「こんなことをお願いできるとは思わなかった」という類の事前期待です。

先日NHKのプロフェッショナル-仕事の流儀-でグランドハイアット東京のコンシェルジュを務めている阿部佳さんの仕事ぶりを拝見したのですが、まさに潜在的な事前期待に応えるよう動かれていました。

帰国当日にパスポートを無くした外国人のお客様への対応で、パスポートの所在をつきとめるだけでなく、成田空港行きのリムジンバスの予約も先回りして1本後ろの便に変更。日本語を話せないお客様のかわりに、タクシーの運転手には行先を地図と手書きのメモを渡して必ずお客様を目的地へお届いただけるよう説明していました。結果としてお客様は無事パスポートを引き取り、成田空港へ向かうことができたのです。

阿部さんの対応はお客様自身も気づいていない期待を超えるものであり、感動を与えていました。お客様はきっと次に来日する際もまた同じホテルに宿泊されるのではと思います。

ここまで説明した事前期待の4つは、1<2<3<4の順でお客様に与える感動の強さは増していきます。また、同じ順番で期待に応える難易度も上がります。状況変化の事前期待と潜在的な事前期待についてはかなり状況に依存するものなので、応えるにはハイレベルなスキルが必要となります。それらに対し、個別的な事前期待に応えることは顧客の情報をきちんと社員間で連携する仕組みを作れば組織的に取り組むことが可能です。

まずは「お客様の事前期待は全員共通」という観点から抜けだし、個別的な事前期待に応えるための取り組みを検討することが、これまで以上の顧客満足を得るための一歩になります。(共通的な事前期待を下回ることの無いよう努力することも忘れずに!)

具体的な手法の話に入る前にもうちょっとお付き合いくださいね。次回はサービス品質についてお話しします。