LTSコラム

プロセス変革で家庭を平和に 第3回:どこを変えたら理想的な生活が実現する?

こんにちは、LTSのコンサルタント大井悠(おおいはるか)です。
『プロセス変革で家庭を平和に』シリーズの第三回目の今回は、具体的なプロセス変革の方法をお話します。

前回までのおさらい

下記の図は第1回のコラムで紹介した我が家のプロセスマップです。このように現状を目に見える形にすることで、いま家庭の中にどんな仕事があり、その役割分担はどうなっているのか夫婦間で同じ認識を持つことができます。現状を把握したら、第2回でお話したように、その家庭にとっての理想の状態をイメージし、理想を叶える上で守るべき原則を決めます。こうして現状と理想が明らかになったら、いよいよ家庭のプロセス変革のスタートです。

主観はプロセス変革の大敵である

現状を把握し、あるべき理想の姿をイメージできたら、次は具体的にどのプロセスを変えたら理想に近づけるのか探っていきましょう。各々のプロセスに対して、「ここは役割分担できそう」「ここはいつも大変だから効率化したい」等の意見を出し合いながら、対象になりそうなプロセスを洗い出していきます。企業が変革対象のプロセスを洗い出す際は、綿密なFit&Gap(※)を行ったり、方々の関係者にヒアリングを行ったりと段階を踏んで調査・分析しますが、家庭の場合はそこまでする必要はないでしょう。当事者である夫婦がダイニングテーブルを囲んでプロセスマップを広げれば準備OKです。

※ 現状と理想像の差異を分析すること

この作業を行う際のポイントは、ずばり主観的・感情的になり過ぎないことです。私は家事の大部分を担っている主婦なので、この手の話になると「毎日の料理作りって大変なのよ!」「水回りの掃除って面倒なのよ!」と半ば誇大に夫に話してしまうのですが、食事を大切にするという価値観は二人で合意したことですから自分の意思でもありますし、水回りの掃除は私が大変だと思いこんでいただけで、よくよく振り返ってみると週に1回程度しかやっておらず実はあまり負担ではなかった、ということもあります。物事を改善する取り組みにおいて、主観ほど面倒なものはありません。具体的に何が負担で、どんな効率化が出来そうか、お互いの得意・不得意や時間の都合上どの辺りが分担できそうかといった観点から、ロジカルかつ冷静に話し合いましょう。とはいえ堅苦しい雰囲気でこの手の話し合いをするのは疲れるので、お菓子でもつまみながら楽しい雰囲気で行うことをお勧めします。

目に見える形で評価する

さて、ポイントをお話したところで具体的に変革対象のプロセスを洗い出す作業を進めていきたいと思います。効率的に対象プロセスや施策を洗い出すには、プロセスをリスト化して評価する方法が有効です。プロセスマップはプロセスを俯瞰するには便利ですが、多くの情報を整理するには向いていないので、リスト化してプロセスの評価結果をどんどん書き込んでいくのです。企業がビジネスプロセスを評価・分析する時も、プロセスをリスト化して各々を目的に応じた評価軸で評価し、変革対象となるビジネスプロセスを洗い出します。効率化や役割分担が前提の場合は、プロセスの処理にかかる定量的な数値(時間や頻度等)も併記することが多いです。

下記の図は企業の例を参考に、我が家の洗濯プロセスをリスト化・評価したものです。我が家は効率化と役割分担を進めることが目的なので、ECRS※を参考にざっくりと5つの解決策を評価軸として設けています。

 

コラム第3回
これらの評価軸を元に夫婦の時間の都合や得意・不得意を考慮しつつ、○×をつけていきます。ちなみに夫との分担に×や△が目立つのは、帰宅時間が遅いことと夫の好き嫌いを反映した結果です。こうしたリストを作成して、上から順に各サブプロセスはどれくらいの負荷があり、どんなアプローチの施策ができそうか分析し、変革妥当性の有無を評価していくと、変革対象になりそうなプロセスを洗い出すことができます。また、分析する過程で、各々のプロセスに対して「これは夫婦で分担できそう」「ここは家事代行を検討しても良いかも」「これはやらなくても何とかなるな」と施策の具体的なアイデアが浮かんでくると思いますので、施策案としてリストにどんどん書き出していきましょう。雑誌等で出てくる時短術の数々もここで非常に参考になるでしょう。こうして変革対象のプロセスと施策の頭出しが出来れば、次のステップに進みます。

※ECRSとは効率化に向けてビジネスプロセスを分析する時のアプローチの1つです。プロセスをなくせるか(Eliminate)、他のプロセスと統合できるか(Combine)、プロセスの順序の変更はできるか(Rearrange)、簡略化できるか(Simplify)の順にプロセスを分析することで、より生産性の高いビジネスプロセスの実現に向けた改善点を洗い出せます。

いきなり全部は変えない

プロセスの分析・評価をやってみると、多くのプロセスが変革対象の候補として洗い出されると思います。しかし、それら全てのプロセスを一度に変えることはありません。普段の生活を送りながら、大きな負担にならない範囲で、より優先順位が高いところから取り掛かります。
企業のビジネスプロセス変革では、1990年頃からビッグバン型という、対象範囲のプロセスを一度に全部変えてしまうアプローチが流行しました。しかし、一度に変えることはその変化の大きさゆえにリスクや負担感が大きく、また準備に時間がかかりすぎて環境変化についていけないこともあり、度々失敗していました。そのためか、近年では一度に全部を変えるのではなく、優先度の高いところから段階的に軌道修正しながら変革する漸進的なアプローチの方が主流になりつつあります。家庭のプロセス変革もこのアプローチで進めることをお勧めします。

 

コラム3回目

 

優先順位の高いプロセスを見極めるために、今度は洗い出した変革対象のプロセスを更に分析してみましょう。上記の表は先ほど洗い出したプロセスと施策案に対して、その施策を実施した時にどれだけ家事・育児が理想の状況に近づくか=影響度、施策を実施する際の負担の大きさ=難易度で評価し、その結果から優先度を決めたものです。この評価結果をもとに、どこから手を付けるか、どんな時間軸で変えていくのかを家族間で話し合うと良いでしょう。

我が家では少しでも家事・育児を簡略化したかったので、優先度は高くなくても難易度が低いものは率先してチャレンジしていきました。例えば、アイロンがけをしなくても良い形状記憶シャツを着るようにしてどうしても必要な時はクリーニングに頼るようにする等です。ありふれた時短術ですが、夫婦で分析・評価した結果取り入れているので、我が家にとって親和性が高く、影響度は小さくても満足度の高い結果が得られました。

また、影響度・難易度・優先度がどれも高い全自動洗濯乾燥機の購入を思い切って進めたので、洗濯がかなり楽になりました。大きな買い物でしたが、ここで思いきれたのは、施策を考える前に夫婦間で家事・育児の理想の状態と守るべき原則をきちんと決めて、夫婦間で握れていたからだと思います。面倒でも夫婦間で理想と守るべき原則を話し合って共通認識を持っておくことの大切さが身に染みました。

ここまでのお話では洗濯プロセスだけを取り上げましたが、我が家では他のプロセスにも同様の手順で検討し、たくさんの優先順位の高い施策を洗い出して進めています。初回のコラムで役割分担の状況を表したプロセスマップのbefore / after をお見せしましたが、そのafter はこうした取り組みを数か月かけて行った結果です。取り組んだすべての施策が短期間ですぐに成果を出せたわけではなく、手間と時間をかけた施策もありました。特に夫との役割分担は思っていた以上に困難で、いろいろと試行錯誤しながら進めました。次回のコラムでは、その最も苦労した夫婦間での役割分担の進め方についてお話したいと思います。次回もお付き合いいただければ幸いです。

第四回はこちら⇒「大切なのは手順ではなく成果

 

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